Morning glory〜ティモシェンコ編〜




「そんじゃあ一山片付きと生体兵器強奪阻止を祝して、かんぱぁーい!!」

「か、かんぱーい……」

先のミッション成功を祝い、東京にあるとある居酒屋で、特命捜査課の打ち上げが執り行われている。ティモシェンコが乾杯の音頭をとれば、男も女も一斉にジョッキを突き上げてバカ騒ぎに興じる……特捜課では打ち上げは恒例行事のようだ。怪我も完治した玲鈴は、はじめての光景に戸惑いつつも、小声で乾杯に参加した。

太陽系連邦警察の本部は地球のニューヨークに置かれているのだが、特捜課は東京・八丁堀に『番所』と呼ばれる基地があり、所属する刑事達は普段は本部より番所にタムロしているのだとか。打ち上げ会場の居酒屋も、特捜課御用達のようで。

「んがんが……っぱぁ〜、この一杯のタメに生きてる!!ほれ、玲鈴も飲め!!」

「は、はぁ……」

エンジンのかかった先輩の誘いには乗らず、玲鈴はマイペースで生中に口をつける。

「あ、そうだ!!ティム先輩はあの時……」

「んな事今さら聞くかぁ?」

「す、すみません……」

「まぁいいや。話して損することじゃないし、むぐむぐ……」

玲鈴の唐突な質問に、酒の入ったティモシェンコ(以下ティム)は串焼きを口いっぱいに頬張りながら語り始めた……

「あむもぐむしゃむぐむぐ……」

「食べるのか喋るのかどっちかにして下さいっ!?」

ティムがこんな調子なので、ここからは彼女に代わって地の文が時間を巻き戻してお送りします。

「さぁてと、果報は寝て待てだぁな」

あの夜、玲鈴と別れたティムはMF(メタルフレイム)と呼ばれるヒト型機動兵器で敵機を鎮圧すべく輸送艦のカタパルトで備えていた。

ちなみに専ら彼女の専用機となっている官給品・レッドオーグルは赤鬼をモチーフにした機体で、十手ブレードと呼ばれる実体武器2本に、対MF仕様リボルバー1丁、同仕様ショットガン1丁、そしてMF捕縛拘束錠(通称・デラワッパ)が装備されている。

青地のパイロットスーツ姿のティムもさぞかし緊張している……

「んごぁぁあ〜……zzZ」

……と思いきや、果報は寝て待てが壮大なフリになっていた。

「ムニャムニャもう食べられないよ……zzZ」

事件現場で眠れるとか、ティムは天才なのか大うつけなのか……

〜そして1時間半が経過〜

「う゛ぅぅ〜、み、水ぅ……」

コクピット内には苦しむティムの姿が。何が起こったのかわかんねーと思うかもしれないが、実はこの時、レッドオーグルのコクピット内には重大なトラブルが発生していた。

「あぢぃいいい……」

そう、エアコンの故障である。電子機器の熱ですっかり内部が熱帯夜状態と化し、眠りこけてしまったティムのスーツは、下着もろとも蒸れ蒸れのぐっしょりと相成ったのである。

「ぷひぃ、生き返ったぁ……」

ミネラルウォーターを一頻りがぶ飲みしたティムは、空調を切り替え取り入れた外気にただただその身を任せる。その姿はまるで風呂上がりにマッサージ機に座り、ぐでーっと湯の余韻に浸る光景を彷彿とさせ、緊張感のキの字も感じることは叶わない。

「作戦が終わったら風呂直行だね、こりゃ……」

『ティム、モーニングコールだ』

頭をポリポリ掻きながら目覚めの一服に手を伸ばそうとしたティムだったが、艦からの通信が彼女のニコチン摂取に横槍を入れた。

『動きなすったぞ。北から3機、南東から2機、計5機の所属不明のMFが城の方に向かった。警告して無視されたり攻撃されるようなら鎮圧にあたれ』

「待ってました!!」

突入命令が下るや、レッドオーグルは艦から勢いよく射出される。ティムは手近な敵を求め、南東へと進路を取った。

「本隊から救難信号が入ったみたいだけど、いったい何が?」

「軍か警察にでも襲撃されたのかしら、急がないとジャラー様に何を言われるか……」

どうやら所属不明機は女海賊ブラックローズのものだったらしい、南東の空では黒光りした2機のMFカレドネースが、通信を交わしながら古城へと飛行している最中だった。

……とそこへ、

「くぉらソコの不審機、止まらんかぁい!!!!」

けたたましいサイレンと目映いパトランプを引き連れ、ティムの操るレッドオーグルが迫ってきたのだ。

「くそっ、警察か!?」

「相手は1機、楽勝よ!!」

カレドネースのパイロット達も、捕まる気は毛頭無い。彼女達の取った行動は当然……

「おわっ!?何するんだぁ!!」

迫る火の粉は払うまで。2機はビームライフルとバルカン砲の波状攻撃を仕掛け、レッドオーグルを破壊するには及ばないも怯ませることには成功した。

「邪魔なのよ!!」

その隙を突き、1機がとどめのホーミングミサイルをレッドオーグルに見舞う。

「そっちがその気なら……こっちも遠慮なく暴れられらぁな!!」

自らに掛かるGをものともせず、ティムは愛機を巧みに操り、ホーミングミサイルを引き連れながらソレを撃ち込んだカレドネースに肉薄し、

「あらよっと!!」

「なっ!?」

体を翻し手早く敵機の背後に回るや、その無防備な背中に蹴りを入れる。そして蹴られた敵機のカメラは、目と鼻の先まで迫ったホーミングミサイルを捉えていた。

「う、嘘だぁぁああ!!??」

撃った本人も、まさか自分に帰って来るとは夢にも思わなかっただろう。モニターを突き抜けリアルな視界に広がるのは、間違いなくホーミングミサイルの先端。それは泣き叫ぶ猶予すら与えられないまま彼女の胴体に突き刺さり、程無くして1機のヒト型兵器を散り散りに爆散させた。

「クソ警察が、墜ちろ墜ちろ墜ちろ!!」

想定外の出来事に慌てだしたもう1機は、ビームライフルを次々に撃ち放つ。だが赤鬼は針の穴をくぐるように光線の隙間を渡り、

「どっこいショーキチっと、」

「がぁう!?」

そのまま敵機に組み付き全重量を預け、森へと叩き落とす。このため、レッドオーグルはカレドネースに対していわゆるマウントポジションを取る格好となった。
さらにどこで抜いたのか、赤鬼の手には十手ブレードが握られており、その先端はつつがなく敵機に向いていた。

「待って、投降する……(隙を見て腕のバルカンを……)?!」

「腕が動かせないって?そりゃ残念だぁな」

ティムにかかっては下衆の浅知恵などお見通しだった。カレドネースの両腕は落下の衝撃で間接部に異常をきたして動かせなくなり、これで暗器の出番はなくなった。そもそも、ティムの機動兵器でマウントポジションを取ろうという発想事態が斬新かつ奇抜なため、相手に心的ダメージを負わせるのにもこの奇襲は有効と言えよう。

「助けて、お願い、本当に投降するから……」

「そうやって命乞いした人達を、どれだけ殺してきたんだぁ?オラ達特捜課の教えはひとつ……『生かして捕るのが定法だが、手向かう奴等は叩いて潰せ』ってな。こちとら、始末書だけなら宇宙一だぁ!!」

これを聞いて、カレドネースのパイロットは青ざめた。悪党の間で広まっていた、赤鬼の噂を思い出したのだ。遠距離武器全盛の時世において、肉弾戦主体で手向かう相手を否応なしに制圧する警察機の噂を。

「いぃ、いやだ、嫌だぁ!?」

必死に命乞いをするパイロットだったが、その悲痛な叫びは最早ティムには届かない。

「続きは閻魔様の前でしな、【罪人擂り粉木(すりこぎ)下ろし】!!!!」

説明しよう!!
罪人擂り粉木下ろしとは、突き立てた十手ブレードの先端をマウントを取った敵機にひたすら叩き込んで罪人に罪の重さを味わわす、単純かつえげつない必殺技なのだ!!

「ひいっ!?やめて、助けてぇ?!!?」

静かな森に何度も響く、鈍い鈍い金属音。3発も突かない内にカレドネースの頭部はぐちゃぐちゃに砕け、カメラは破壊されコクピットのモニターは砂嵐に変わった。

「うりゃうりゃうりゃりゃりゃりゃあ!!!!」

それでもレッドオーグルは得物を降り下ろすのを止めようとはしない。やがて敵機の胸部もボコボコになり、圧力に屈して凹み出していた。

「ひいっ、ひぃぃいい!??!脱出、脱出……」

胸部の下にはコクピットがあり、このままでは圧死は避けられない。死の恐怖と混乱と暗がりの中、彼女はすがるように緊急脱出スイッチに手をかけ……

「やった、助k」

胸部から強化ガラスに守られたコクピットが射出……されかけたのだが、彼女が『助かった』と言えなかったのには理由がある。
緊急ハッチが開いて球体のコクピットが射出されたのはいいが、降り下ろされた十手ブレードが偶然ハッチに被さり、コクピットはハッチと機体に挟まれてしまったのだ。彼女の今までの罪を考えれば因果応報と言えなくもないが、この後、実にお間抜けな最期を迎えることになるのは言わずもがなだろう。

「助かっ……でなびゅ!?!?」

レッドオーグルの圧力の前に、強化ガラスは卵を割るように砕けて、十手ブレードが乗ったハッチは蝿叩きのようにパイロットを瞬時に叩き潰した。何かが弾ける音がした直後、はみ出た腕はプルプルと小刻みに震えたが、鮮血が滴り落ちると同時にぷらり、ぷらり、と力なく風に揺れた。御愁傷様です。

「あちゃあ、随分間抜けな死に方したもんだなぁ。ギャグ漫画だったら絆創膏で済んだのに……」

罪人とはいえ流石に可哀想になったのか、ティムはハッチの下敷きになったホトケさんに合掌し、残り3機を墜とすべく北へと向かう。しかしそこには、思いもよらぬ事態が待ち受けていた……

「…………ん?」

「おとなしく投降しますっ!!」
「このまま逃げ帰っても組織に殺される!?」
「死にたくありませんっ?!」

……まさかの全面降伏である。
いくら味方は3機といえど、相手が悪すぎた。消えた2機と迫る赤い機体から、2機を落としたのは赤鬼に間違いないと察し、投降してでも生きているのがマシだと懸命な判断を下したのだろう。

「私達、元々『でもしか』で傭兵やってたペーペーなんです!?」
「これからは真人間になりますっ!!」
「命だけは助けてください!?」

発言の真偽はともあれ、機体から降り武装も解除し、涙ながらに訴える姿から、生きたいとの思いだけは察することが出来た。

「よぅしわかった。ただ、お前らはイマイチ信用ならんから『ワッパ』だけはかけさせてくれよ?」

「「「ひゃあっ!?」」」

ティムは訴えを聞いたものの、もしものことを考慮して人用拘束錠を射出して3人を手際よく捕縛する。

「さてと、玲鈴も出てきたみたいだし回収・回収……」

この時、玲鈴は気がついていなかったようだが、城から出てくる時の彼女の生体反応をキャッチしていてくれたらしい。自首した賊共々回収して帰還しよう、そして風呂にしよう……と思っていたその時、事件は起きた。

生体兵器が城から飛び出したのである。

「な、なんじゃありゃあ!?」

レーダーがハッキリ捉えたのは強力かつ未知の生体反応。うねうねと這い出した蔦葛は、そのすぐ側の小さな生体反応……玲鈴を飲み込もうとしていた。

「さ・せ・る・かぁぁあ!!??」

……後輩が危ない。
ティムは咄嗟の機転で無人の敵機にデラワッパをかけると、ハンマー投げの要領で勢いでレッドオーグルを激しく回転させた。

「ちょ、私達まだ拘束されたままなんですけどぉぉお!??!」
「危ない当たる?!?!」
「いやぁぁ、死ぬのはいやぁぁあ!?!?」

そのお陰で自首した3人は死にそうな思いをしているのだが。

「うちの大事な相棒(バディ)に……何してけつかるぁぁぁあああ!!!!」

そして程よい角度で投擲された機体は城に着弾し、大きなダメージを与えて生体兵器の動きを鈍らせたのである。

「んじゃ後は頼むわ」

「おいおい後って……あぁ、始末書は忘れんなよ!!」

こうして玲鈴は助かった。帰還したティムは医療班に玲鈴を預け、自首した3人を留置室にぶち込み、いよいよ待ちに待ったお楽しみの風呂へと足取り軽く向かっていった。

「♪風呂、風呂、風呂風呂〜……」

一仕事終えた後のティムは、広々とした浴槽に決まって36度くらいのぬるま湯を注ぐ。漬かれるほどまで湯が溜まったら……

「いやっほ〜い!!」

スーツのまんまで湯に飛び込む。後は湯船の中で脱皮するように、下着ごとスーツを【すぽーん】と音がしそうなほど瞬時に脱ぎ捨てると、

「ふぃぃ〜……」

現れたのは柔らかさと実用的筋肉が同居した見事な女体。その背中には存在感抜群の桜吹雪が鮮やかに咲き誇っていた。

「どうやって脱いでるかって?そりゃ企業秘密だぁ」

風呂上がりのチューハイを心待ちにしながら、今日の疲れを湯に溶かすティムであった。
〜ティム編・了〜

ティモシェンコ=トーヤマ(ティム)
・豪腕女刑事にして特捜課のエース。どこぞのの星で反政府ゲリラ活動をしていた過去があり、捕縛された際『ゲリラより面白いことがある』と今の上司に特捜課にヘッドハンティングされた。



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