Runble Fetish〜ヨロイとスーツの死亡遊戯(デスゲーム)〜






前回のサウナの件で一部のコアなファン層から注目を集めることとなったクーラは、その特異性の噂は辣腕Pの友人でもある放送作家にも知れ渡り、彼女はその放送作家が携わる深夜のアイドルバラエティ『おざなり!!キャスケット』にレギュラーとして抜擢された。

『笑いが取れなきゃアイドルじゃない』がこの番組のテーマで、アイドルが芸人殺し級のボケやリアクションに挑むのがウリらしい。

「よかったぁ、この番組スーツ着なくてもいいんだぁ……」

このままいけばフェティッシュ業界のエリート街道まっしぐらなクーラにとって、肌の露出度は何よりも大事な重要事項だ。番組の内容はともあれ、スーツと離れられるのは彼女にとってこれほど魅力的な仕事は無かった。

早速テレビ局入りすると、番組スタッフに促されて控室へと繋がるエレベーターへと乗り……

(虫の知らせ……)

乗り込もうとしたクーラだったが、全身にサブイボが起つ感覚を覚え、咄嗟に廊下の影に。そして次にスタッフの前に現れた時には、カバンに詰めていた自分のドライスーツに身を包んでいた。

「お待たせしましたっ!!」

「クーラさんその恰好は……」

唖然とするスタッフの反応も分からなくもない、しかし幾多の修羅場(?)を潜り抜けてきた彼女は本能的に理解していた……自分が試されていることに。

「さ、行きましょう♪」

何事もないかのようにエレベーターに乗り込むクーラ。すると、

「ひゃうっ!?」

エレベーターの床が突如真っ二つに割れ、彼女は滑り台のような床に堕とされる。その次には身体中にローションをぶちまけられて、成す術なく流しそうめんのように床を滑り降りていく。

「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??」

もんどりうちながらも必死に堪えたクーラは、その状態のまま収録現場のBスタジオまで到達、端のセットの柱にぶつかるまで芸術的滑走を出演者やギャラリーに見せつけた。

「いやぁ〜見事なローションっぷりだね、しかもドッキリを見越してのウエットスーツだなんてエライ気合い十分だし」

「は、はひぃぃぃ……これはウエットじゃなくてドライスーツですぅぅぅ……」

見事にMCの度胆を抜いたクーラは、スーツを脱ぎ捨て他の出演者と同じ水着姿になると、レギュラー初登場とは思えない果敢さをもって、次々に笑いをかっ飛ばしていった。

しかしこの時彼女は気が付いていなかった、

(私たちをさしおいて……)
(重装備アイドルだかなんだか知らないけど……)
(ひな壇でおとなしくしていればいいものを……)
(アンタなんかフェティッシュなアングラ雑誌がお似合いなのよ)
(次の企画で、私たちの養分になるといいわ……)

彼女の参入をよく思わぬ【5人組】の存在に……

それは収録を終えたクーラが大部屋でくつろいでいた時のこと。

「前略母上様、今日はバラエティ番組の収録でした。久々の肌の露出に少し緊張しましたが、共演者の人たちに迷惑をかけない仕事が出来たと思います……っと、メールはこんな感じでいいかな?」

「道草クーラさん……でしたよね?」

実家の母にメールで近況報告していたところ、背中をポンポンと叩かれる。振り向くと、そこには制服のような衣装の5人組の姿が。

彼女たちはアイドル仕掛け人として業界では有名な辣腕作詞家・冬元隆がプロデュースしたグループ【UHJ(裏原宿)48】の主要メンバー5人。番組の共演者だ。名前まで紹介したいのは山々だが、地の文の目からは同じ顔が並んでるようにしか見えないので以下省略。

「今度の企画で一緒に仕事することになりました」
「お手柔らかにお願いしますね」
「いい勝負にしましょうね」
「あら、もうこんな時間……劇場でファンが待ってるわ、じゃあまた」

「は、はぁ……また今度……」

今を時めくアイドルに突然声をかけられたクーラ、何が起きたのかわかんねーといった顔でキョトンとしていると、

「ねぇあなた、ちょっとちょっと」

「は、は……い?」

今度は同じく共演者の、緑色の髪と瞳がトレードマークのエメラルダス翠子(みどりこ)が声をかけてきた。彼女も水中ロケやウエットスーツロケが多いアイドルなのだが、不思議とクーラとの棲み分けが出来ている。

「大変な娘たちに目をつけられたね、貴女も」

「へ?それってどういう……」

「今度の企画……彼女たちのソロ曲を懸けたサバイバルゲーム対決なんだけど、毎度相手になるアイドルがヒドイ目に遭ってるのよ」

話によると、番組の制作責任者たる読裏テレビのプロデューサーが冬元に圧力をかけられているらしく、ヤラセじみた手法でUHJを勝たせているのだとか。その際、自分達を脅かすような存在にはそれとなく圧力をかけて……

「全国区に進出してもおかしくないご当地アイドルはいくらでもいるのに、手をこまねいているのはこれが一大要因だって、週刊S潮に書いてあったの」

「そんな嘘半分な週刊誌なんて信じられないですよ〜……」

「いや、あながち嘘でもないぞクーラ君!!」

すると突如として、放送作家がクーラと翠子の間に割って入ってきたではないか。

「うわっ、ビックリした!?っていうかここ女性専用ですよ!!」

「冬元氏のやり口には僕も辟易しているんだ……あんな画一性しか取り柄のない没個性的なモブ軍団のどこがいいんだか」

「ちょ、元ネタの人に失礼過ぎないですかね?」

「いや、光るものをもった『個』もいるんだ。でも集団に混じるとその個性も失われてしまう」

そういうと、放送作家は次のロケ内容が記された企画書をクーラに手渡した。

「なになに、『UHJ対道草クーラ・今日は楽しいキツネ狩り』……『正規軍役のUHJが、反政府ゲリラ役の道草を鎮圧します』……えぇぇぇぇっ!??!」

「うちのPにも参ったよ、こんな八百長試合をゴリ押しするなんて……でも、クーラ君がいるならこの負け戦、面白くなりそうだ!!」

「いや、話が全然見えてこないんですけど……」

「これがUHJの着る、一部でパナスーと呼ばれているSF風スーツだ。そしてクーラ君が着るのが……」

「うわっ、ゴツっ、重っ、辛うじての露出が目だけ!?」

動きやすそうでカラフルで、顔もハッキリ分かるUHJのパナスーに比べ、クーラの装備は黒革キャットスーツの上に肩部や脚部にアルマジロを思わせるプロテクターを取り付けた本格的な防弾アーマー(のレプリカ)を着込み、さらに頭にはサバゲのフェイスガードを一体化したようなヘルメットという、重装備アイドルの名に恥じぬ凄まじい重装備。

「サバゲって機敏な動きが要求されるんですよねっ!?こんな重装備じゃとても……」

勝ち目などない……と言いたげなクーラ。するとどこからともなく聞き覚えのある声が。

「だからこそユーに白羽の矢が立ったのデースよ、Ms.クーラ?」

「ちょ、キャサリンさんまでどうして!?」

黒光りするラバーのトレンチコートに身を包み現れたのは、フェティッシュキャメラマン・キャサリン。

「よくその恰好で警備員に止められなかったですね……」

「いきなりデスが、収録までミーと合宿デース!!」

そしてこの展開である。

「にぇぇぇぇ、い、いきなり過ぎますって!!」

「ミーと銃の扱いから重装備での立ち回りまで、マンツーマンレッスンデース!!覚悟しやがれデース!!」

「え、黒服さん一体!?何をするやめウボァァァァァァぁ!!??」

〜それからどした〜

「ん……ぐ……うぅ…………?」

「Good morning、Ms.クーラ。ご機嫌いかがデースか?」

キャサリンに拉致られたクーラが目を覚ましたのは、どこかのキャンプ場のコテージのベッドの中だった。

「電波少年じゃあるまいし、こんな使い古されたやり口であたしを縛ろうなんて……」

ここがどこだろうと関係ない、さっさと帰ろう……とベッドから起き上がろうとしたクーラ。

(……体が、固い?違う、固いのは外側だ、まさか!?)

だが全身に強烈な異物感を覚え、彼女は大鏡の前に向かい……その場に立ち尽くした。

なんと、寝ている間に収録で使う防弾アーマーを着せられていた上に、パックパックには10kgのおもりを入れられ、首・両腕・両足には南京錠付の拘束具。

「そして南京錠の鍵は、ミーの手の中デース」

「どんだけ用意周到なんですかぁ……」

「1日のカリキュラムが終わるまで、決して脱がさないのデース!!」

これ以上拒もうものなら、今度こそキャサリンに掘られてしまうかもしれない……クーラは付き合わない訳にはいかなくなってしまい、渋々ヘルメットを装着した。

「まずは基礎体力と敏捷性を鍛えるために『パルクール』デース」

「いぃぃ、こんな恰好でパルクールぅ!?」

説明しよう!!
パルクールとは欧州労働者層の間で始まったトレーニング方法で、壁や手すり、さらに電柱や屋根などあらゆるモノを使い、忍者のようにアクロバティックに街を駆け抜ける……というものだ。

第二次世界大戦の頃はフランスのレジスタンスがナチスに立ち向かう際、パルクールで鍛えた敏捷性が大いに役立ったらしく、今ではパルクール自慢の愛好家が自分の華麗なパルクりっぷりを動画サイトにこぞってUPしているとかいないとか。

「さぁ、車に乗り込んでクダサーイ、絶好の練習場に案内してあげマース」

「やるっきゃないんですよね……」

言い忘れていたが、この時の時刻は27:30。キャサリンが運転する4WDは豪快に暗い山道を駆け上り……

「さぁ到着デース、ここなら気兼ねなくパルクール出来マスデース♪」

「ってここ、バブルが弾けて閉鎖された廃ホテルじゃないですか!?」

着いた所は地元のイナヤン(田舎のヤンキー)の度胸試しに御用達の心霊スポット。大事なことだから敢えてもう一度言おう、この時の時刻……27:30。

「そのムカシ、殺人事件があったとか無かったとか、イナヤンが言ってマーシタ」

「やばいですってそれ!!」

「殺人現場にはリンゴが落ちていて、ガブリとかじった歯型の跡があったみたいデース」

「それ【林檎殺人事件】じゃないですか!?っていうかこんな古くて分かり辛いネタ使わないでくださいっ!!」

「心配御無用デース、ミーもついてイクし、サカタトシオで清めればperfectionデース!!」

「伯方の塩ですよぉっ!!」

寸劇を繰り広げている間にも、鬼教官キャサリンはすっかりラバーと男根ゴムパンツに着替えていた。

「準備はいいデースか?それじゃあ……Here we go!!」

「あぁっ、置いていかないでぇぇぇぇぇ!??!」

そして嬉々としてホテルに突入するキャサリン、1人で置いてけぼりも心細いので並走するしかないクーラ、

こうして変態女子による廃屋パルクールが幕を開けた。

「机を華麗に横っ飛び、ソファを使って側転、」

「待ってくださぁぁぁぁい!?」

ぼろじゅうたんが敷き詰められたロビーを抜け、

「壁走り壁走り、ワンツーワンツー!!」

「はぁ、はぁ、ふぅ、ひぃ……」

寂れた客間ではイナヤンがタギングしていった廊下の壁をひた走り、

「オブジェを鉄棒代わりに一回転!!」

「もうらめぇぇぇ!!??」

いかにもバブリーな造りの鉄板焼きバーではオブジェでやりたい放題。

これだけ我が物顔で好きにされていては、霊の皆さんもさぞかし黙ってはいないはず……

『ナンカナニガビンビンナ黒ヅクメノ女トヤタライカツイ恰好ノ女ガ、軽快二飛ンダリ跳ネタリシナガラ走ッテル!?』

『コ、恐イイイイイ?!』

『関ワリ合イニナリタクナイィィィィィ!!』

霊すら引かせてしまうとは、いやはやフェティシズム、恐るべし。

それはさておき、キャサリンに食らいついていったクーラは自分の肉体のある大きな変化に不覚にも気付かされてしまう。

(こんなに着込んでるのに、結構動けるもんなんだ……)

ハードな潜水重装備ロケやスタント経験を積み重ねた結果、彼女の体には本人も気が付かぬうちに、ボディラインを損なわない程度の実用的筋肉が備わっていたのだ。

「やっとユーの潜在能力に気づきマーシタネ?オリンピックにフェティッシュな競技種目があったなら、ユーは間違いなく表彰台に上がれマース♪」

「そんなオリンピック出たくありませんっ!!」

この後2人のスタイリッシュ痴女は、日の出までパルクりまくり、廃墟の霊たちを恐怖のズンドコに陥れたそうな。

〜そして時刻は5:00〜

「はひぃぃぃ〜、疲れたぁ……」

「よく頑張りましたネー、それじゃ朝食にしましょうカー」

そう言ってキャサリンがクーラに手渡したのは……

「こ、これって猟銃ですよね……」

「今日は鹿狩りデース!!」

ずっしり重い猟銃だった。どうやらキャサリンは銃の扱いを実戦で叩き込もうとしているようだ。

「猟友会は掌握したから安心ネ、戦わざる者食うべからずデース!!」

「もうサバゲとか関係なくなってる!?……あ゛ぁも゛ぉ、なるようになっちゃえ!!こうなったら鹿でも猪でも仕留めてやりますよ!!」

こうしてロケまでの一週間、パルクールとハンティングに明け暮れた結果……

「命中…………っ!!」

「Wow、免許皆伝デース!!ミーが教えることはもうアリマセーン、合宿の成果を存分に見せつけてクダサーイ♪」

「はいっ!!」

ここに即席ソルジャーが誕生してしまった。

シャワーを浴びて再び防弾アーマーを着込んだクーラは、テレビ局が用意した戦場行きのマイクロバスで……

「んごぁぁぁ〜…………zzZ」

(良く言えば)瞑想していた。

〜そしてロケ現場のキャンプ場〜

「というわけでございまして、絶好のサバゲ日和となりました!!」

MCの若手芸人によるベタなつかみから、つつがなく始まったサバゲ対決のロケ。クーラとUHJの5人は、ヘルメット以外のスーツ部分は既に装着完了だ。

「うわー、クーラちゃん強キャラオーラ全開〜」
「さすが重装備アイドルって感じ?」

「いやいや、5人相手にどこまでやれるか……でもやるからには、重装備界を背負う気持ちで頑張ります」

ここでルールを確認しておこう。

※1対5による『キツネ狩り』方式。使用するエアガンは、UHJは1人あたりハンドガン1丁、クーラはサブマシンガン2丁
※アイドル達にはGPSが取り付けられており、半径100m以内に相手が近づくとピコピコ音が鳴り、距離が縮まるにつれピコピコの間隔が早くなる
※UHJは最初は各自バラバラに行動すること。合流したメンバーとは示し合わせた連携攻撃オッケー
※BB弾が当たるとゾンビ防止策として、スーツに取り付けた爆竹と血糊が作動します。潔くドラマティックに倒れること
※クーラはこの企画史上類を見ない重装備のため、特別ルールとして1ミスオッケー。その際は1ミスの証としてドラマティックにヘルメットを脱ぐこと

各々、ヘルメットを被り所定の位置につく。そして……

「それじゃあ準備はいいかなアイアンメイデン、Let's runble!!!!」

戦いの火蓋は切って落とされた。

開始5分、早くも動きが。

「おっと、白パナスーとクーラが一直線に近づいているぞ、これは早くも撃ち合いになるのか?」

実況の局アナが確認しているGPSとキャメラの映像では、クーラとUHJの1人の進行方向がぶつかる状態にあった。

「あんな装備でまともに動けるはずが無いわ、こんなの楽勝ね」

ピコピコ音が鳴る中、白パナスーは腰のホルスターからハンドガンを抜いた……

「えっ、なに!?」

すると一気にピコピコ音が早まり、慌てて得物を構えた頃には……

「そこだぁっ!!」

「ぐがぅっ!?」

あとの祭りだった。
猪突猛進の勢いで放つクーラのサブマシンガンで撃ち抜かれた腹部では爆竹と血糊が破裂して、

「え…………う、そ」

朱色に染まった白パナスーはドラマティックに倒れこみ、あえなくリタイアとなった。
その散り際には見向きもせず、クーラは次のターゲット目掛けパルクールでキャンプ場をひた走る。

「ちょっと、白がヤラレたんだって!?今までいなかったよ、あんな超積極的にサバゲする娘なんて……」
「心配ないよ。あの娘トロかったし、私たちが挟み撃ちにすれば……」

白パナスーがヤラレたことは、味方のメンバーにも知らされた。
しかしこの真紅パナスーと水色パナスーは運よく合流に成功したようで、余裕綽々といった感じであった。互いに対角線上に身を隠してクーラを迎え撃つ。

「GPSに反応が……向こうかっ!!」

そうとは知らずにクーラ、ターゲットの制圧にかかるべくGPSが導く方へ早足で向かう。反応は段々と大きなものへと変わり……

「今よ!!」
「そこだわ!!」

思惑通り挟み撃ちに。

「なんのこれしきっ!!」

ところがぎっちょん、
パルクールで鍛えた超反応で両方の凶弾をかわしてしまったかと思えば、空中で体を翻し両手をクロスさせ、サブマシンガンの銃口を2人へと向けたではないか。

「あがはぁ!?」
「ふごっ?!」

スタイリッシュに撃ち抜いた。

「なにこれ……つ……よ」
「ばけ、も……の」

2人はただ、血糊を噛み締め絶命する(演技をする)ことしか出来なかった……

「なんということでしょう、道草クーラ・2人まとめてスウィープだ!!」
「うは、この娘強いわー、ツヨツヨガールやわー」

実況席の局アナと芸人も大盛り上がりだ。その一方で……

「おかしい!!話が違うじゃないか!!??」
「センセイ落ち着いて下さい!?私にも何が起きたのかさっぱり……」

この様子を隠れて観ていた冬元とその腰巾着・UHJ劇場の支配人は面白くない。八百長試合を企てておきながら、事がつつがなく運んでいないことに苛立ちを隠せない冬元は、支配人の襟首を掴み、彼をシェイクすることでストレスを誤魔化していた。

「しかしあの小娘、思ったよりやる……露骨だが背に腹は代えられぬ、支配人!!アレを手配しろ!!」

「いいんですかセンセイ!?アレは総選挙圏外の……」

「天下の冬元が手配しろと言ったら、スベコベ言わずに手配するんだよ!!」

「は、はい直ちに!!」

話の内容から察するに、どうやらパワープレーでクーラを潰そうという腹らしい。

「あと2人、ここからが正念場だ……」

そんなこととは露知らずのクーラ、フィールド内を慎重に進んでいると三度のピコピコ音が鳴り響く。

「この近くに……あ、あれは!?」

垣間見えた人影は、一際目立つ薄紅色のパナスーを纏っていた。彼女は総選挙で1位となった、UHJの現・センター。

千載一遇の好機とばかりにクーラは彼女を捉えにかかる……

「かかったわね!!」

「そんな……青パナスーの娘がいっぱい!?」

これは冬元の罠だった。万一UHJを脅かす手練れに備えて、UHJ研修生に青パナスーとハンドガンを装備させていたのだ。その数ざっくり80人。

「さぁ、まずはこの娘に1ミスさせるのよ!!」

薄紅パナスーがす…と右手を挙げると、青パナスーの研修生軍団から一斉に、BB弾の雨あられがクーラに降り注ぎ、

「がっ、あぁぁぁぁぁあっ!?!?」

防弾アーマーに仕込まれた爆竹が破裂。クーラはルール通りにスタント経験を駆使してドラマティックに転がりながらヘルメットを脱がして倒れ、これで1ミスとなった。

(やった、今顔が全国区で、深夜帯の大きなお友達に露出してる……)

撃たれた本人は満更でもないようだが。そして彼女は、意識が飛んだように仰向けで目を閉じ、まるで賢者タイムでも訪れたかのように倒れているままである。

「こ、この娘一体何を……」

その様子に薄紅パナスーが些か困惑していると、

「ひゃあっ!?」
「あうっ?!」
「ひぎぃっ!?」
「ふがっ?!」

研修生軍団が、爆竹と血糊を破裂させ次々と倒れこんでいく。

「ななな、何が、何が起こってるの!?」

突然のことに慌てふためく薄紅パナスーは、森の奥からぬらりと現れる、黒光りする女性型の何かを……見た。

「Hahaha!!ブラックオネーサンに蜂の巣にサーレタイのは、どこのメス豚ちゃんデースか?」

黒のラバースーツ、黒のフードにガスマスク、そして禍々しいアサルトライフル2丁。

そこにいたのは間違いない、鬼教官キャサリンだ。

「さぁMs.クーラ、ユーの本気を見せつけてやるデース!!」

するとこの声に応えるかのようにクーラはゆらりと立ち上がり……

「レジスタンスに雇われたスーパーヒットマンが女だと知られたくなかったのに……貴様らよくもあたしの顔を!?」

何が起きたのかわかんねーかもしれないが、彼女は合宿中、ものすごく役作りしてたようです。鬼気迫る表情でまさにスーパーヒットマンといった感じのクーラは、サブマシンガンを再びその両手に握り……

「生きてここから帰れると……思うなぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

キャサリンと共に研修生軍団を挟み撃ちにすると、

「あぎゃ!?」
「ぷごっ?!」
「きゃっ!?」
「あくぅ?!」
「あがっ!?総選挙1位のこの私が、研修生の死屍累々と一緒だ……なん、て」

根こそぎ駆逐。色違いのパナスーが1人混じっていたような気がしますが、まぁ気にしない気にしない。

「残すは1人、行くのデース、Ms.クーラ♪」

「ありがとうございます、キャサリンさん!!」

ついに1対1となったキツネ狩り対決。しかし何十人を相手に戦ったクーラである、疲労の色はさすがに隠せないでいた。

「はぁ、ふぅ……」

噴き出す汗をぬぐいながら、彼女は最後のピコピコ音が鳴る方角へと足を運んだ。

「いやだ、いやだぁ、東南アジアに左遷なんていやだぁぁあぁ!!??」

相手の若草色パナスーも諸事情により必死のようだ、震える手にハンドガンを握り締め、クーラに玉砕覚悟で挑んでくる。

互いになりふり構わずBB弾を撃ちまくり、そして……

「……ぱぁう!??!」

「あがっ…………」

両者ほぼ同時に着弾、爆竹と血糊を派手にまき散らしながら地面へと倒れこんだ。

相撃ちとなった場合、ビデオ判定による決着になる。最終的にキャメラマンが寄ってきた方が勝者となる。その判定の結果……

(あ、あたし……勝ったの?)

勝者……クーラ。彼女は勝利を確信すると口の中で血糊を噛み締め、寄ってきたキャメラに対し、渾身のプロ根性を見せつけるのだった。

「ごめん、ジョナサン……プロポーズ、謹んで断るしか、なくなっちゃった……ごぽっ!?」

なんと、爆竹と血糊を用意してくれた美術さんの努力を無駄にしないように、最後までスーパーヒットマンとして殉じるという粋(?)な覚悟。

「はぁ、はぁ……あたしよりイイ人……見つけて、幸せになっ……て……むぇ」

この後カットと言われるまで、クーラは安らかなデスマスクを保持し続けていたとかいないとか。

〜それからどした〜

キツネ狩り対決に見事勝利したクーラは、世間に『自分が重装備アイドルである』ことをさらに強くしらしめた。
そしてこの映像を観た映画関係者にたいそう気に入られ、この後彼女はハリウッド映画への出演を決めることとなる。

一方のUHJだが、冬元の圧力営業や作詞・作曲盗作疑惑などがマスコミに散々叩かれ、メンバーや関係者もどこでどうしているやら、分からなくなってしまったとかしまってないとか。

『イヤハヤ、芸能界ッテ怖イネ』(byホテルの霊)

〜Runble Fetish・了〜











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