「ぐ、いちち……あーあ、額に穴開いちゃったよ」 「あ、あぁう、そんな、立った……」 それはあまりにも想定外な出来事。 撃ち殺したはずの敵が、痛みに顔を歪めながらも立ち上がってみせたのだ。 事の始まりは、小惑星をめぐる、女性のみで構成された民兵組織とマフィアとの間に起きた紛争だった。 兵力と装備の差に任せて優位に戦況を進めていた民兵組織なのだが、マフィアが雇ったその筋で名の知れた凄腕傭兵に一部隊を壊滅させられてしまう。 民兵側はすぐさまに精鋭部隊を投入するも、傭兵はものともせずにソレを蹴散らしていく。 だが、いつまでも好きに殺られっぱなしの民兵ではなかった。ミニガンを搭載した装甲車を投入するや、鉄甲弾を惜し気もなく撃ちまくり、傭兵の重武装を貫き蜂の巣にした…… 驚いたような顔をしたまま動かない女傭兵。 民兵たちは勝利を確信したのだ…… しかし女はむくりと起き上がる。そして、 「きゃっ!?」 ミニガンの狙撃手の金魚鉢のヘルメットごと、旋風の如く体を装甲車から引っこ抜くや勢いを死なすことなく壁に叩き付け、それを無惨に粉砕した。 「あ、が、ぐ、や、やめ……」 「……やってくれたね、礼くらいさせてよ?」 虚ろな目をした精鋭兵の眼前で笑う女傭兵の口からは、獣めいた牙が妖しく輝いていた…… 「wait a minutes,You'll get yours.(待っててよ、お宅らもじきにこうなるんだから)」 事を終えた女は声すら出せない精鋭達にジョークのように宿命を告げる。 その後、彼女らの姿を見たものはいないという…… |