「うが、くふっ……(そんな、あんなに集まった味方が……まるで塵屑みたいに……)」 片腕だけでか細い首を握り締められ、みるみる顔が青ざめていく民兵は、薄れ行く意識の中でこう呟いた。 敵地から精鋭部隊を乗せる人員輸送機が帰還したのはつい先ほどのことだった。戦闘機発着所に静かに降り立ったその機体は、瞬く間に猛烈な爆風に包まれ四散したのである。 怒号が響く中で慌ただしく動く消火班と、生存者を担架で治療室へと運ぶ救護班。 そんな中、爆風で遠くに飛ばされた脱出ポッドから、扉を蹴破り『侵入者たち』が這い出てきた。 「こんなダイナミックな侵入、前代未聞だわ」 「任務前に死ぬかと思ったぞ……」 「まぁまぁ、五体満足で侵入出来たわけだし?」 先に出てきたのはマフィアの隠密工作員たち、その後に出たのは、雇われの女吸血鬼。 「せいぜい楽しく囮させてもらうから、お宅らはお宅らの職務を全うすればいいよ」 「……言わずもがなだ」 「ここは任せたわよ」 侵入者は二手に別れ、発着所に居残った女吸血鬼は粛々と自らの役目を全うする…… その結果がこの有り様だ。 「ちょっとは抵抗してくれなきゃあ、退屈過ぎてくたばっちまうよ?」 「う、うぐぐ……」 いくら銭金のための傭兵稼業とはいえ、彼女にとってこの場にいた民兵達の戦闘能力は『顔じゃなかった』らしく、もて余した闘争本能を溜め息へと変換させている。 「ぐはっ、は、離して……」 「そっか、じゃあ離してあげるから……」 苦しみ悶える民兵の願いをいともアッサリ聞き入れた女吸血鬼は、左手の力をゆるめて彼女を苦しみから解き放つ…… その刹那、 「派手にふっ飛びな!!」 「ゲホゲ……いやぁっ!?」 背中のジェットパックに弾丸を叩き込んで暴発させたではないか。 「嫌ぁぁあぁぁあああぁーーーーーー……べぽっ!?!?」 制御不能のジェットパックは、彼女を戦闘機のエンジンへと否応なしに突き刺し、火柱を上げながら肉体もろとも木っ端微塵に砕け散る。 騒ぎが大きくなればなるほど、女吸血鬼の往く道には兵力が集中することになる。 「さぁて、楽しませてもらおうかしら」 |