「ふぅ……派手にやってくれてるじゃない」 柔らかな肉体を厚く硬い外殻に大切に包み込んだその女は、如何にも値の張りそうな椅子に深く腰掛けながら、監視カメラのモニターを眺めつつ優雅に葉巻を燻らせていた。 「隊長、準備が整いました」 部下である民兵に隊長と呼ばれたその女、名前はナハル=ニヴ。宇宙海賊から民兵組織隊長まで成り上がった辣腕女戦士で、実力と悪知恵で幾多の修羅場を切り抜けた過去から、その道ではバン・ナハル(蛇女)との異名で通っている。 「ご苦労だったわね……」 ナハルはそう言うと左手の下のボタンに手をやり、作業を終えた部下の労をねぎらうように…… 「貴女、疲れてるんじゃない?少し休むといいわ♪」 「しかし、侵入者が……がわぁっ!?!?」 その脳天にレーザーを馳走した。 「ぞ、ん、な、だい、ぢょ……ぐっ」 「万が一にでも生きててもらうと、後で困るのよ」 敵方の傭兵の圧倒的戦闘力を視るや、ナハルは真っ先に退却を決断した。彼女の宇宙船には、海賊時代からこれまで略奪してきた金品や美術品の数々が詰め込まれていたのだ。 「あいつらには精々、私の過去を消し去ってもらうわ。そして手に入れるのよ、私に相応しい永久の若さと美を」 ガスマスクと金魚鉢で頭部を覆い、エアタンク内蔵型ガトリングジェットパックを背負い、アサルトビームライフルをその手に持ち、要塞さながらな重装備のナハルは、 基地の自爆装置を作動させると、自らの宇宙船が待つ専用の発着所へと重厚な足音を響かせるのだった…… |