『(シュー、ゴボゴボゴボ…、シュー)』 エントリー直後に視界を覆いつくした泡が退くと、 球体状のLAMAヘルメットから見る視界は至って良好だった。 (ゴムの匂い、結構きついな) 冬華は眉間を少ししかめた。 鼻口を覆うマスクから息を吸い込むと、潜る前以上にゴム臭さが気になったのだ。 すぐ側に再び泡の渦が生まれ、やがてそこからピンク色のドライスーツ姿のダイバーが見えてくる。 『(スフーッ)舞衣、ちゃんとエントリーできてたよ(ガボガボガボ)えらいぞ』 冬華は側に寄っていき、舞衣のスーツとお揃いのヘルメットを撫でてやる。 『(コポコポコポ、スーッ)えへへ〜、ちゃんとできてましたか(ガボボ)?、ありがとうございますっ!(スフッ)』 呼吸音混じりに舞衣の返事が帰ってきた。 ヘルメットの中に封じ込められた顔は冬華と同じくマスク姿だが、目元に嬉しさが滲んでるのが分かった。 『(スフーッ)とっても気持ち良いですっ(ガボガボ)これから(スフッ)、一緒にいっぱいもふもふしましょう!(ゴボゴボゴボ)』 『プッ(スフッ)、あんたって水の中までモフモフ言ってるのね(ガボガホッ)』 『(コポコポコポ)ううっ、そんなに(シュー)変ですかっ?』 『別に。(フー)舞衣らしくてカワイイよ』 そう言って冬華は彼女のグローブに包まれた手を舞衣の手に絡めてやった。 当然ではあるが、会話するとやたら頻繁に呼吸音が混ざってくる。 (人間って、こんなゴテゴテした格好しないと水の中じゃ生きていけないのよね) 舞衣の物々しい格好と、同様に自分自身を包み込む青基調のドライスーツと機材。 冬華は改めてマスクの下で息をついた。 (やっぱり、ゴム臭いなあ…) 『(コポコポコポ)どうしたんですか、せんぱい?』 『(シュー)なんにも』 |