ジオン軍少女MS小隊戦記 〜少女達の散華〜





破壊の限りを尽くした一年戦争もジオン宇宙攻撃軍の拠点「ソロモン」が陥落し、地球連邦軍の勝利も見え始めた頃、

数隻のジオン艦隊がグラナダ上空の月軌道ステーションから出撃した。



艦隊はチベ級重巡洋艦「ヨルク」を旗艦としたムサイ級巡洋艦4隻の計5隻の艦隊で「第3遊撃艦隊」と名付けられていた。



目的は、ジオン最終防衛ライン攻撃に向った連邦艦隊の隙をつき連邦に攻略されたコンペイトウことソロモンに奇襲攻撃をしかけ

連邦軍の補給ラインを混乱させる事だった。





「第3遊撃艦隊」と名付けられてはいたが、実際はソロモンからの敗残艦艇から構成された寄せ集めの艦隊でMSも定数の半分位の18機6個小隊・・ 

パイロット達もソロモンからの敗残兵か緊急招集の若い学徒パイロット達が占めており、

その中には6名の若い女性パイロットも含まれていた。





そして、艦隊の4番艦ムサイ級巡洋艦「ハンザ」搭載のMS小隊は全員が10代の女性というよりまだ、少女の年齢のパイロット達だった・・・・




巡洋艦「ハンザ」所属MS小隊パイロット達
(左) シズエ・コンノ伍長 17歳
(中) ナオコ・サトウ少尉 19歳
(右) ユミコ・ワタナベ伍長 16歳




作戦を前にムサイ級巡洋艦「ハンザ」のMS格納庫は喧騒に包まれていた。

初期ロット建造艦に属する「ハンザ」はあちこちに不具合箇所が見られたがまだ現役で充分通用する艦だった。

しかし、最大で6機は搭載出来る筈のMS格納庫には半数の3機のMSしか搭載されていなかった・・



そんな、格納庫の中を黄色のテストパイロット用ノーマルスーツを着用した小柄な女性パイロットがMSのチェックを行っていた。

パイロットは「ハンザ」唯一のMS小隊の小隊長「ナオコ・サトウ」少尉だった。

ナオコ少尉は、まだ19歳・・ 

開戦時から各種MSのテストパイロットを務めていたが実戦経験は殆ど無かった。

しかし、MSパイロットの不足の為、急遽実戦部隊に配属され「ハンザ」のMS小隊の小隊長に任命された。





ナオコ「よし、機体のチェック終了。作戦開始まで・・ えっと・・ 後、1時間か・・」





ノーマルスーツのグローブに内蔵された時計で時間を確認したナオコは、

自分の愛機「MS−06F−2 ザクU」のコクピットから身を乗り出し作戦前の慌ただしい格納庫内を見渡した。

そこに、





?「隊長!! ナオコ少尉!!」





と、ナオコを呼ぶ声が聞こえた。

声のする方向を見ると緑色の一般パイロット用のノーマルスーツを着た2人の女性パイロットが

ナオコのいるコクピットに向って来ていた。





ナオコ「シズエ伍長、ユミコ伍長、2人共機体のチェックは終わったの? 作戦開始まで後1時間よ」





シズエ伍長とユミコ伍長は、ナオコの部下で小隊の2,3番機を務めていた。

2人ともハイスクールの学生だったが志願してジオン軍に入隊した学徒兵、ナオコと同じく10代の女の子だった。





シズエ「はい、隊長。機体の整備及びチェック完了しました。ユミちゃ・・ い、いえ! ユミコ伍長の機体チェックも完了しました!」





シズエ・コンノ伍長は、小隊の2番機。長い黒髪のスレンダーな少女で17歳。

両親・姉2人・弟1人の6人家族だったが姉2人も軍に入隊し、上の姉はサイド3の総司令部に勤務をして存命しているが、

2番目の姉は志願兵として地球に降下し行方不明になっていた・・



几帳面で真面目。そして、少し小さな胸が気になっている少女だった。





ユミコ「ハーイ! ユミコもシズちゃんと一緒にチェック終わりましたー!!」





シズエ「ちょっと、ユミコ・・ そうじゃ無いでしょ!」





ユミコ「あ! し、失礼しました。ナオコ隊長! ユミコ・ワタナベ伍長、機体チェック完了しました!」





シズエ「まったく、ユミコは・・」





ユミコ・ワタナベ伍長は、小隊の3番機。茶色がかった髪を両脇で纏めている(俗にいうツインテール)にした少しグラマラスな体形をした少女で16歳。

両親・兄1人・弟1人の5人家族。兄はアフリカ戦線のMSパイロットとして戦っていた。

シズエとはハイスクール時代の同級生で仲が良く、明るくあんまり考えずに行動するタイプの少女だった。





ナオコ「もう・・2人共元気ね・・ まだ作戦開始まで時間が有るから休息を取っておきなさい」





シズエ・ユミコ「はい!ナオコ隊長!」





ナオコ「あ、あと、私達の間では隊長とか少尉とか何々殿とかやめましょう。私の事はナオコさんでいいわ。あなた達も私の前でも普段どおりの呼び方でいいわよ。私もあなた達の事は“さん”とか“ちゃん”づけで呼ぶけど、どうかしら・・?」





ユミコ「は、はい!判りました!」





シズエ「判りました。ナオコ隊長!」





ナオコ「もう・・ 作戦開始は50分後、ブリーフィングで受けた作戦要領を再確認。開始時間10分前には格納庫集合。以上、解散!!」





シズエ・ユミコ「はい!了解しました!」





2人の少女は敬礼をし、パイロットピットへ向っていった。

少女達のノーマルスーツの後姿を見ながらナオコは少し溜息をつき、





ナオコ「ハァ・・、私・・ あの子達の事守る事出来るかしら・・ あんな無邪気で元気な子達・・ あんな子達まで戦場に送り込むなんて・・」





愛機のコクピットシートに座りこみながら緊張で震えが止まらないグローブを嵌めた両手を見ながらナオコは、





ナオコ「私だって殆ど実戦経験無いし・・ それにこの作戦・・ 無理が多いよ・・」







作戦はジオン本国攻撃の為、主力のレビル艦隊が出港した手薄なソロモンを「第3遊撃艦隊」で奇襲し連邦軍を混乱に陥れ補給線を麻痺させる事だったが・・





ナオコ「(いくら手薄だからって、巡洋艦5隻にMS18機でどんな戦果が上がるというの・・、下手したら私達全滅の犬死だよ・・)」





そして、ナオコはノーマルスーツのポケットから綺麗に装飾されたペンダントを取り出し、目の前にぶらさげ目を瞑りながら、





ナオコ「兄さん・・ 私とあの子達を守ってください・・」





そのペンダントはルウム戦役で戦死したナオコの兄が、ナオコの16歳の誕生日に贈った物だった。

ナオコはいつもお守りがわりにそのペンダントを持っていた・・





パイロット待機ピットの中で、シズエとユミコは作戦前最後の休息をとっていた。





ユミコ「ねぇ、ねえ、シズちゃん。ナオコさんのスーツ黄色で可愛いね。ナオコさん童顔で可愛らしいからすごく似合う。あー、私達もこんな緑のスーツじゃ無くて、黄色のスーツが良かったな・・」





シズエ「ユミちゃん・・ ナオコ隊長でしょ。黄色のスーツはテストパイロット用。隊長はテストパイロットを務めておいでだったからあのスーツなの、いいじゃない緑、私は好きだな・・ お姉ちゃんも着てたし・・」





地球で行方不明になっているシズエの姉が最後に送って来た写真にはシズエ達と同じ緑のノーマルスーツを着用した笑顔の姉が戦友達と写っていた・・ 

そして撮影の翌日姉は未帰還・・ 

行方不明になった、ナオコと同じ19歳だった・・



この一般兵用の緑のスーツを着ていると姉と一緒に居る様な気分にシズカはなっていた・・





ユミコ「あ、ゴメン・・ お姉ちゃんの事思い出しちゃった・・ ゴメンね・・」





シズエ「い、いいよ・・ 謝らなくて。大丈夫! お姉ちゃんきっと無事だよ」





ユミコ「そうだよ、戦争終わったらきっと帰って来るよ。だから戦争早く終わらせる為にこの作戦、成功させよう」





シズエ「うん、連邦軍なんかに負けない! スペースノイドの為に頑張ろう」





そこに、作戦開始15分前をつげる警報が鳴った。



ユミコとシズエはピットのシートから立ち上がり、





シズエ「ユミちゃん行こう」





ユミコ「うん、早く行かないとナオコさん怒っちゃうかもね」





2人は愛用のメットを被りピットを後にした。

2人はこの場所に戻って来る事は二度と無かった・・







警報を聞きながらナオコは、ペンダントをコックピット内の邪魔にならない箇所に吊下げノーマルスーツのヘルメットを被ろうとした時、

ふとメット内のクッション材を見て、





ナオコ「私・・ このメット脱ぐ事が出来るのかな・・」





不安になりながらメットを被っていると、機体の足下からナオコを呼ぶ声がし、機体の足下では、ナオコの2人の幼い部下達が無邪気な笑顔で待っていた





ナオコ「(あの子達は、死なせたくない・・ 絶対無事に帰還させなくちゃ)」





ナオコはそう思っていたが、その思いはひどく難しい事だという事もナオコは感じていた・・・





そして、3人の10代の少女達は一つ目の巨人に乗り込み、破壊と殺戮があふれている戦場へ向った・・





ナオコ達の小隊の装備機は「MS−06F−2」通称ザクUF2型と呼ばれる機体で

スタンダードなF型ザクUのジェネレーター換装等を行った機体で、

スペック上は地球連邦軍の主力MS「RGM−79 ジム」に対抗できる筈だった。

数が同じならば・・・





ナオコ「(15・16・17・18・・ 18機、6個小隊しかいない・・ 少なすぎる・・)」





ナオコは艦隊所属のMS部隊の数を確認し、溜息をついた・・





ナオコ「(いけない、いけない・・ 私がしっかりしなきゃ・・)」





ナオコ達の機体を他艦所属のMS部隊が追い越していった。

「MS−R09 リックドム」や「MS−14 ゲルググ」等の新鋭機だった





ユミコ「あー、ドムにゲルググ・・ ユミコ達もアッチの機体が良かったな・・」





シズエ「ユミコ伍長! 機体は決まっているんだから我儘言わない!」





ユミコ「だってー、 ザクじゃ古い機体だよ・・ 新しい方がいいなぁ・・」





ナオコ「ユミコちゃん、この機体だってイイ機体よ、操縦もしやすいし、故障も少ないわよ。あんな高機動の機体はもう少したってからね」





ユミコ「はーい、ナオコ隊長判りました」





シズエ「もう、ユミコ伍長ったら・・」





ナオコ「あ、それと、2人共小隊内なら敬称は抜きでいいわよ」





ユミコ「は、はい! ナオコさん」





シズエ「了解しました。え、え〜と・・、ナ、ナオコさん・・(そういえば、ナオコさんお姉ちゃんと同じ年なんだよな・・)」





ナオコ「うん!2人共、判ったみたいね。それじゃ、作戦行動の最終確認を行うわよ」





シズエ・ナオコ「はい! ナオコさん!」





作戦自体は簡単な計画だった。ソロモン戦時のデブリに艦隊が隠れて接近し事前にMS部隊が発進しコンペイトウに残留している

連邦艦隊にギリギリまで接近し奇襲をしかけ出来るだけ損害を与え連邦軍に混乱を与える・・



敵の残留兵力はどれ位なのか? どれ位の損害を与えたら退却するのか? 余りにも不確定要素が多い作戦だった。





その作戦の中でナオコの小隊に与えられた任務は、敵MS部隊を新鋭機の部隊が引き寄せている間に敵補給艦等の撃破する事で有り、

機体もナオコの機体のみが対MS用のMMP-80マシンガンと対艦用のミサイルポッド、近接専用のヒートホークを装備しており、

シズエとユミコの機体は280mmザクバズーカと予備マガジン、ヒートホークを装備していた。





ナオコ「2人共、判ったかしら。私達の目標は敵艦艇。MSが出てきたら私にまかせるか他の小隊にまかせて退避すること。判った?余計な戦闘はしないこと。(偉そうな事言ってるけど・・ 私だってMS戦なんてシミュレーターしかやった事無いのに・・)」





ユミコ「はい、ナオコさん了解しました。でも連邦のMSなんて簡単に撃墜できるのに・・ あんな劣化コピーのMSなんて・・」





シズエ「了解しました。でも、MS戦闘・・いざという時は行ってもいいんですか?」





ナオコ「危急の時はしかたないわ・・ でも、連邦のMSを甘く見ないで。敵はビーム兵器を標準装備しているのだから」





テストパイロットをしていたナオコはビーム兵器が持つアドバンテージを嫌と言うほど知っていた。

その為、この子達にはMS戦闘をさせたくなかったし、戦闘になった時は自分が盾になろうと考えていた・・





ユミコ「(ナオコさん、心配過ぎなんだよ・・ 連邦のMSなんかに負けるわけないのに・・)」





シズエ「ナオコさん、ミノフスキー粒子が濃くなって来ました」





ナオコ「2人共、気を付けて! 敵が近いはずよ!!」





その時、ナオコの機体のセンサーが敵部隊を感知した、

そして、それは直ぐに目視で確認出来る距離に接近してきた・・ 

その敵は、人型では無く球体に砲と腕が取り付けられた様な機体だった





ユミコ「な、何あれ・・ 宇宙ポッド・・? あれが、連邦のMS?」





ナオコ達の小隊は、敵の後方に廻り込む事に成功した。

しかし、そこには護衛の部隊が展開していた。

それは「RB−79 ボール」と呼ばれる中距離支援用のモビルポッドの部隊。

その部隊は、新兵教育を兼ねた訓練部隊でパイロット達もナオコ達と同じ様な10代の若い女性パイロット達で編成されていた。





連邦パイロット「え、な、何・・ ジオンのMS・・ な、何でこんな所に・・?」





突然のジオンMSの奇襲で少女パイロットばかりのボール部隊は、混乱に陥っていた。

バラバラな回避行動をとったり、照準も付けず砲を放ったりする、ボール部隊を見ながら





ユミコ「あれで、戦おうというの?笑わせる・・ 私だけで全滅させてやる!!」





ユミコのザクUは急加速して恐慌状態のボール部隊に向かっていった。





ナオコ「ユミコちゃん!!一人では危ない!!」





シズエ「ユミー!! 駄目よ!!一人じゃ!!」





ナオコとシズエはユミコを引き留め様としたがユミコは、





ユミコ「ナオコさんも、シズちゃんも何を怖がっているの? あんな出来そこない私だけで充分よ!」





ユミコのザクUはボール部隊に向かってバズーカを放った、砲弾は1機のボールを直撃し球体の機体を搭乗している少女パイロットごと打ち砕いた。



その爆発の衝撃で密集陣形のボール部隊は、数機が誘爆し数人の少女パイロット達が原子に還元された・・





連邦パイロット「イ、イヤー!!」「し、死にたくなーい!!」「だ、誰か・・」「く、来るな―!!ギャー!!」



連邦軍の少女パイロット達は悲鳴をあげながらユミコの操る機体に打ち砕かれていった・・





ユミコ「ハァ、ハァ・・ れ、連邦なんて、連邦なんて・・ みんな、死んじゃえー!!」



ユミコは次々にボールを破壊していった。

そして、どんどん前方に突出していった・・





ナオコ「ユミコ!!深入りしすぎ!!戻って!!」





シズエ「ユミー!!だ、駄目よ!!戻ってきてー!!」





ナオコとシズエはユミコに戻ってくる様に叫んだがユミコはそんな忠告を聞き流し、更にボール部隊を追って進んでいった。





ユミコ「2人共、何を言っているの?こんな敵・・ 直ぐに片づけるんだから・・」





しかし、ユミコの直ぐ近くに破局が迫ってきていた・・







ユミコ「て、敵は・・ わ、私が全部やっつけるんだから・・」





既に十数機のボールを屠ったユミコは奥深く入りすぎていた 1機で突出してくるユミコの機体を連邦艦隊の砲列が捉えていた





“ビー!!” “ビー!!”





突然の警報にユミコが気付いた時には、ユミコの機体をサラミス級巡洋艦の主砲の砲口が至近距離で捉えていた。




閃光の中に消えるユミコ.....


ユミコ「う、うそでしょ・・? や、やだ・・、死にたくない・・」





と、ユミコが呟いた次の瞬間、サラミスの主砲が発射され高温高圧のメガ粒子がユミコの機体に向かって来た





ユミコ「イ、イヤー!! こ、来ないでー!! 死にたくない!死にたくない! ナオコさーん! シズちゃーん!た、助けてー!!」





ユミコは絶叫したが、ナオコやシズエにはどうしようもなかった・・



ビームの粒子がユミコのザクUに命中しナオコの眼前のモニターが真っ白に輝き、ユミコの身体を真っ白な光が包んでいった・・・





ユミコ「(こんな事なら、あの時もっと抱いてもらえば良かった・・ ユウ君・・ ユミ・・ 死んじゃうね・・ もっとユウ君とセックスしたかったな・・)」





ユミコは死の瞬間、ハイスクール時代に処女を捧げた年下の恋人の事を思っていた・・、

そして、高温高熱の粒子がユミコの小さな身体を襲った。

メガ粒子の奔流はノーマルスーツの上からもはっきり判るユミコの胸や10代の若々しい身体を焼き溶

かし16歳の少女の身体を原子レベルまで分解した・・ 

やがて、機体が熱や圧力に耐え切れなくなり火球となり爆発した・・





幼い女子学徒パイロット「ユミコ・ワタナベ伍長」は、戦死した・・





16歳の少女パイロットを乗せた緑のMSは火球に替わりその火球も徐々に収まって消えていき

その後には僅かな残骸が浮かんでいるだけだった・・





ナオコ「そ、そんな・・ ユミコちゃん・・ わ、私・・ 守れなかった・・・」





シズエ「え、え・・ う、嘘でしょ・・ ユミちゃんが死ぬなんて・・ 戦争終わったら学校に戻って、又、勉強するって・・ そ、そんな・・ ユ、ユミー!!」





2人がユミコの戦死にショックを受けている最中に、混乱から立ち直った連邦軍部隊は迎撃態勢を整えてきた。





シズエ「ウッ、ウッ、エグッ、エグッ・・ ユ、ユミ・・ な、何で・・ どうして・・ ユミ・・ ユミ・・」





シズエは嗚咽しながら、今、目前で死んだ友人の名を呼んでいた。





ナオコ「シズエちゃん、泣くのは後! 今は敵の対処が優先よ!!」





シズエ「は、はい・・ ナオコさん・・ わ、判りました・・」





シズエは、メットのバイザーを開け涙を拭いた。





ナオコ「よし! シズエちゃん、しっかりして。いい?よく聞いてね。敵は混乱から立ち直ってきているわ。 作戦はたぶん失敗・・・ これからは、無事に帰還する事が作戦目的よ」





シズエ「は、はい・・」





ナオコ「よし! じゃ、いい、シズカちゃんの機の武装は対艦用装備、MS戦には不向き・・ だから私が敵MS部隊を引き付けるからシズカちゃんは、その間に「ハンザ」に戻って」





シズエ「え、え、で、でも・・ それじゃナオコさんが・・」





ナオコ「私は大丈夫。テストパイロットをしてたんだから、シズちゃんより腕は確かよ。大丈夫、無事に戻るから。シズちゃんは先に戻ってて」





シズエ「で、でも・・ ナオコさん・・」





ナオコ「シズエ伍長!!これは、小隊長からの命令です!至急、母艦「ハンザ」に帰還を命じます! 大丈夫、ちゃんと私も戻るから・・」





シズエ「い・・嫌です・・・ そんな命令聞けません・・ 2人で一緒に艦にもどりましょう・・。わ、私、もう・・ お姉ちゃんを失いたくないんです!!」





ナオコ「エッ!?」





シズエ「ス、スミマセン!ナオコさんが地球で行方不明になっている二番目の姉と年も同じで勝手に姉と混同してしまって・・ スミマセンでした!!」





ナオコ「(そうなんだ・・ お姉ちゃんと・・ しょうがないか・・)判ったわ、お姉ちゃんとしては、可愛い妹を一人で行かせる訳にはいかないわね・・ シズちゃん、敵の陣形が薄い箇所を付いて母艦に帰るわよ」





シズエ「は、はい!ナオコさん!!」





ナオコ「よし!! じゃ、行くわよ!!(この子だけは、絶対に返さなくちゃ・・ 私も生き残りたいけど・・ 無理かな・・・)」





ナオコとシズエの機体は連邦軍部隊に向かっていった。

敵は残存のボールが7機と、サラミス級巡洋艦が4隻、そして、前方から2機のジムがナオコ達に接近してきた。





ナオコ「(くっ! 敵が多すぎる・・ どうする・・・)シズエちゃん、私があのジム部隊にミサイルを発射するから、その隙に残ったボールを掃討して。無理はしないで戦闘不能状態にするだけでいいわ」





シズエ「了解しました!! ナオコさんも無理はしないでくださいね」





ナオコ「フ・フ・・ リョーカイ。シズエちゃんも気を付けてね」





シズエ「はい!!ナオコお姉ちゃん!」





シズエはバーニアを吹かし前方のボール部隊に向かった。





ナオコ「(よし、ジムとボールさえ何とかなれば・・ 後はサラミスだけ・・ 何とかなるかな・・)」





ナオコのザクUは自分達に急接近する2機のジムに向かい脚部のアタッチメントに装備して有るミサイルランチャーから3発のミサイルを発射した。



先頭の隊長機らしいジムは回避したが、後方のジムのコクピット至近でミサイルが爆発しそのまま後方のジムは動かなくなった。





ナオコ「1機だけか・・ でも、何であのジム止まっちゃったんだろう? パイロットをやっちゃったのかな・・」





ナオコが疑問に思っていると隊長機らしきジムは、機体の向きを変えボール部隊を攻撃に向かったシズエのザクUの方に向かっていった。





ナオコ「ま、まずい! これじゃ、シズちゃんがあぶない!!」





機体を反転させナオコはジムの後を追った、その前方ではシズカ機がボール部隊と戦闘に入っていた。そして、その背後にジムが迫っていた



シズエが接近してくるジムに気がついたときには至近距離になっており、ジムのビームスプレーガンがシズエの機体に向けられた・・





シズエ「ヤ、ヤ・・ そ、そんな・・」





シズエが恐怖で顔を覆って死の瞬間に怯えたが、その瞬間が中々来なかった。シズエが恐る恐る前方モニターを見ると、

ジムはコクピット部をヒートホークで抉られており、ジムとシズエ機の間には腹部から火花を散らしている1機のザクUがあった。





シズエ「え、え・・ ナ、ナオコさ・ん・・ そ、そんなー!!」





ナオコはジムとシズエ機の間に割って入りヒートホークでジムのコクピットを叩きつぶしたが自分の機体も腹部に直撃をうけていた・・





シズエ「ナ、ナオコさーん!! 返事、返事して下さーい!!イヤ、イヤ・・ ナオコさんまで死んじゃうなんて・・ そんなのって・・」





その時、ヘルメットのスピーカーから、今、一番聞きたい声が聞こえてきた。





ナオコ「シズちゃん・・ 私、まだ死んでないよ・・ 今、脱出するから、そっちで受け取って・・」





シズエ「は、はい!! しっかり受け止めますから安心して下さい!」





ナオコ機は何時爆発してもおかしく無く、ナオコはベルトを外しハッチを開けて脱出しようとした。

その時、コクピット内のコンソールに兄からのペンダントを置き忘れていた事に気が付き左手でペンダントを掴んだ瞬間、

機体のジェネレーターが限界に達し爆発した・・





爆発の奔流がナオコの身体を包み19歳の女の子の身体を弄んだ・・





爆風に巻き込まれ若く柔かい身体が切り刻まれながらナオコは。





ナオコ「(シズちゃんだけでも・・・ でも、まだ・・死にたくなかったな・・・ に、兄さん・・ナオコも兄さんの所に行きます・・)」





ナオコのまだ誰にも許した事の無い処女の身体を強烈なショックが襲い、次の瞬間ナオコの意識は永遠に途絶えた・・



空間を漂うナオコの戦死体...



ナオコは19歳にしては未発達の身体を破片と爆風で傷付けられ、右腕と左脚は引き千切られた無残な死体にかわりながら宇宙空間を漂っており 

左手は兄からのプレゼントのネックレスをしっかり握りしめていた・・





巡洋艦「ハンザ」所属第1MS小隊 小隊長 ナオコ・サトウ少尉 戦死・・・







シズエのザクUの前を残骸と共にボロボロになった黄色のノーマルスーツが流れてきた。



それは、命懸けでシズカを護って息絶えた姉と同じ年齢の上官の変わり果てた姿だった・・





シズエ「え、え・・ う、嘘でしょ・・ さ、さっき・・ 死んでないって・・ そっちで受け取ってと、言ったのに・・ そ、そんなのって・・ そんなのって・・」





黄色のノーマルスーツは、空間を漂い流れて行き、無事な左手が持っているペンダントがキラキラ輝いていた・・





シズエ「イ、イヤー!! ナオコさん! ナオコさん! おねえちゃーん!!」





シズエは絶叫した。友人のユミコを失い、又、目前で自分を護ろうとした姉の様な存在の優しい上官を失った・・





シズエ「ウ、ウ、・・ エグッ、エグッ・・ ユミちゃん・・ ナオコさん・・ な、何で、何で・・ 死んじゃったの・・ 私・・ 一人だけにして・・ ウ、ウ・・」





泣きじゃくっている、シズエに向かって残存の連邦部隊が攻撃をかけてきた。





“ガン!” “ガン!”





シズエ機に着弾のショックがあった。





シズエ「キャァ! よ、よくも・・ れ、連邦め・・・」





シズエ機は向きを変え、自分の友人や上官を殺した敵に向かい突っ込んでいった。

武器はヒートホークが一振りのみだった・・





そして、シズエ機に不用意に近づいて来た、ボールに向かいヒートホークを振り降ろした、

切り裂かれたボールは、コクピットが露わになり中のクリーム色のノーマルスーツを着た少女パイロットが見えた。



敵少女パイロットはまだ胸も目立たず、シズエよりも年下に見えた。

バイザー越しに見えた表情は、死んだナオコに似た童顔のパイロットだった・・





そんな、敵パイロットを見たシズカは、



シズエ「お前らのせいで・・ ユミやナオコさんが・・ 死ねー!!」





と、叫び無防備な少女パイロットにヒートホークの柄を突き刺した


胴体を引き千切られる様にして戦死した連邦少女パイロット 15歳


クリーム色のノーマルスーツは手、足をビクっと伸ばし真っ赤な血を噴き出しながら押し潰されていった・・





シズエ「ハァ、ハァ・・ やったよ・・ 皆・・ か、仇は取ったよ・・」





そう、呟いたとき機体を激しいショックが襲った!





シズエ「キャァー!!」





シズエがボールパイロットを惨殺している間に、連邦の増援部隊が到着し、シズエ機に攻撃をしてきた。



新手のジムが放ったマシンガンがシズエ機のコクピット付近に着弾した。

装甲を増したザクUのコクピットハッチは、ある程度敵弾を防いだが、

遂に装甲が砕けて破片が内側のコクピットに居るシズエに襲いかかった。





鋭い破片はノーマルスーツごとシズカの右腕を引裂いた、右腕は操縦レバーを握ったまま肘の部分から切断された・・



そして、破片の一部はコクピットシートの一部ごとシズエの右脇腹を引裂き腹圧に負けた腸等の内臓が溢れてきた・・





シズエは、愛らしい口から鮮血を吹き出しながら





シズエ「ガハッ!ゲボッ! ヒヤァー!! う、腕が!腕が! う、うそ・・・ ちょ、腸が出てる・・ イ、イヤ、イヤ・・ は、早く戻さなきゃ・・」





左手で溢れ出ている腸を腹部に戻そうとするが腹圧に負けてなかなか戻らず、逆に内臓はドンドン溢れ出て来た・・。



シズエは泣きながら内臓を腹部に戻す行為を続けていた。



断末魔のシズエ...



シズエ「も、戻らない・・ イ、イヤー! こ、こんな死にかたなんて、絶対、イヤー! ゲホッ! ゲホッ! い、痛い・・痛いよ・・ ユミ・・ シズカさ・ん・・ わ、私・・ 死にたくないです・・ お姉ちゃん・・ た、助けて・・」





と、呟き口から血の塊を吐き出し、発育途上の17歳の身体をビクッ!と痙攣させシズカは絶命した。

ユミコと違いまだ誰にも身体を許した事も無い処女だった・・





ジオン軍女子学徒パイロット「シズエ・コンノ伍長」は、戦死した・・





ジオン宇宙攻撃軍 第3遊撃艦隊 4番艦「ハンザ」所属の10代の少女パイロットで編成されたMS小隊はこうして全滅した・・・





その後、3人の少女パイロットの亡骸は....





「ユミコ・ワタナベ伍長」の遺体は回収出来なかった。遺族(両親・兄(20)・弟(13))には、母艦に保管されていた遺髪が届けられた。 二階級特進し曹長。





「ナオコ・サトウ少尉」の遺体はジオン軍によって回収され終戦後、サイド3の遺族(母親・妹(14) 父親と長男は戦死)に返還された。 二階級特進し大尉。





「シズエ・コンノ伍長」の遺体は撃破された機体の中から連邦軍によって回収され検死解剖後、程度の良い遺体の為、各種実験に使われコンペイトウ内に保管されていた。

終戦後、3年たってサイド3の遺族(両親・姉(23)弟(13) もう1人の姉は戦地で行方不明)に返還された。 二階級特進し曹長。



SS GALLERY一覧に戻る







☆グラビアBOX☆
掲示板カテゴリ検索
写メ/待ち受け 動画/ムービー
音楽/エンタメ 雑談/その他
趣味/スポーツ
無料レンタルBBSebbs.jp