ひきこもりに関してのレポート


多くの人間は世界に対して不安を抱いている。自分の部屋からもう出ることはない。その期間は数年、場合によっては数十年もあり得る。私(記事執筆者)は、今まで見たことの無い当事者についに対面した。


北日本に住む家族にはある秘密がある。家の佇まいは大きく、明るい。オレンジ色の柔らかい雰囲気と青いソファと座椅子が見受けられる。庭には暖かい夏風が優しく流れる。全てのドアは開いている、ただひとつを除いては。そのドアの後ろに真梨恵は住んでいる。彼女は22年もの間、本当に必要な時を除いて、部屋から出たことはない。友達もいず、仕事もなく、コンサートに一度も足を運んだこともなければ、SEXをしたこともない。


そう、真梨恵は私の従妹である。つまり、家族の一員である。彼女が存在していることを初めて知ったのは、私が16で、彼女が39歳の時だった。私の親戚は彼女のことについて話すのを避けていた。彼女の名前は何か物語の中の名前のように変わっていった。今、私は彼女のことをより知りたくなったのである。


真梨恵について話をしたいときは、家族は全員外に出かける。彼女がそれを知ってしまったら、その不安が大きすぎる。そんなことがあれば、状況はますます悪くなるに違いない。もしかしたら、以前の様になるのかもしれない、彼女が8日もの間自室のドアを開けることなく、皆が心配したあの時のように。彼女はきっと喉がとても乾いていただろう。何時間もの間、母は閉じられたドアの前で彼女に話しかけ続けていた、隣人に聞こえないように、とても静かな声で。朝になって、彼女は水をドアの前に置いた。そして夜にそれはなくなっていた。弟が一枚のメモ書きを見つけるまでは、彼は姉の死をとても心配していた。その時、ドアが開き震えた膝の姉貴はついにその小さな部屋から出てきた、そして彼女は「…死にたくない」ともらした。


真梨恵の面影は、人生や目標を失った子どもたちと同じ顔をしている。彼らは世界中に存在している。ドイツ、アメリカ、日本。しかし彼らの今までの人生と言う物は孤独なものであった。彼らはいつかその古びた自宅の一室に戻り、外界とのコンタクトを全て絶つ。それは多くは数カ月、一番多くて数年、もしかしたら数十年と続くかもしれない。


精神科医は原因について、深刻な社会に対する恐怖だと推測する。羞恥心や、他者からの要求にこたえられるかどうかといったものから、他者そのものに対する不安もある。日本では、両親が医者の下に助け求めるといった現象が明らかに、そして強烈に拡大している。なぜなら、彼らの息子(娘)が二度と自分の部屋から出たがらないためだ。精神科医の斉藤氏はこの現象について「一つの国家の悲劇」と話す。多くの若年層の男性が思春期の中から抜け出せていないと話す。


どれほどの数に上るのか、検証は困難である。ただ、日本の厚生労働省の調べによると凡そ50,000人ほどだと言うが、斉藤氏は100万人ほどいるのではないかと見積もる。確かなことは、精神科医や医者の下には、時代が進むにつれ多くの数の人間が訪れるようになった。彼らにはこんな名称がつけられている。「ひきこもり」である。ひきこもりについてのイメージと言えば、マンガを描くことに勤しる、テレビを見る、ゲームをする、などである。


真梨恵の両親はもちろん、彼女の状態を指す言葉をよく理解していない。彼女の生活についてはほとんど話すことはなかった。例えば、知り合いに対して、彼女のことをどのように説明しているのかなどである。どれほどの「ひきこもり」がこの国にいるのか、知る者は誰もいない。


しかし、もちろんであるが、精神ケアの専門医、江田氏には、そういった患者から多くの連絡が寄せられている。両親はそれどころか、立派に成人した自分の子どもに対して前述した不安を多く抱いている。「現在、社会への適応障害はとても多く見られます。それは、全ての人に対しての要求が増大したためです。だからこそ、彼らの多くは達成すること自体を拒むのです。」と江田氏は推測する。そういった社会への適応障害はしかし、全体の原因に起因するものでは全くない。多くの社会適応障害者はパーティーに2度行かなくなる、友人との会話を拒む、学校を退学するといった行動はまた異なった原因である。


いつから真梨恵はこうなったのだろうか、誰にも想像がつかない。しかし、両親と弟は何かを感じ取っている。真梨恵がまだ子どもの頃、体重の増加をクラスメートに笑われたときに、何かに気付くべきだったのかどうかを。彼らはいまだに自らに問いかける。「だから彼女はこうなったのかもしれない」40年経った今、弟はこのように振り返る。「そういう状況はよくあり得ることだと思う、彼女はそれを許容できないにも関わらずね。」


真梨恵の写真を見れば、その変化を良く理解できる。
3歳のころの彼女は赤い頬と大きく開いた口で笑顔を向ける、彼女の手はカメラに向かって一杯に伸びている。髪はすっきりとしており、唇は紅い。
17歳の写真はどうであろうか、髪は長く伸び、表情を隠す。視線はカメラに向けられていない。唇は閉じ、笑顔はそこにはもうない。多くの写真は家族とのものである、大家族であるのに、彼女はいつも一人で座っている。



この時は真梨恵はまだ弟と散歩をしたり、映画を見に行くこともあった。しかし、学校での彼女の環境は悪くなり続けるばかりだった。高校から職業訓練校に移り、卒業後は乳児担当の看護師の資格を手にし、病院で働き始めた。7年も経つと、彼女の口数は以前に増して減り、家に帰ればすぐに自分の部屋に籠るようになってしまった。


結局、彼女は辞職し、そのお昼に母に家に帰ると連絡をした。リビングの丸いテーブルに腰かけた彼女に、しばらく経って母はこう告げた、


その瞬間を母は後悔している、「もうそういうことはないわよね、あなたはいつもひきこもってばかりで、私たちに全然話をしてないわよね。さぁ、役所に行って、失業手当の申請をしてきなさい。」


真梨恵は怒り、自分の部屋に消えていき、ドアを閉めた。「今でもね」母はこうつぶやく。


それから、父はこう語る、「私たちは何か幽霊と住んでいるみたいだ」母は朝3時に彼女が歩き回る音が聞こえると言う、「夜になると頭痛がするわ」。彼女は良く冷蔵庫から何かを取っているようだが、その量はとても多い。彼女が取っているとは思えないほどの量である。


日中は、胸が苦しくなるような、そんな声が部屋中に聞こえる。その声を聞いている誰かがいることは、誰もが気づくことだ。「出来るのなら、私は彼女を抱きしめてあげたい。でも、そんなことは彼女は二度とさせてはくれないでしょう。」こういった恐怖症を持つ人間は良く、母とのとても親密な関係と言う物を持っている。


精神科医の福原氏はこう語る、「両親は思い切って、ひきこもりの子どもに構うことを拒むべきです。そうすれば、きっと子どもは否応でも社会に復帰すると思われます。」
一方の江田氏は、「生きるか死ぬか!の様な方法では、亡くなってしまうケースもあり得ます。こういった人々は、専門的なケアが必要でしょう。」
「彼女の様な人々は、社会的な現実というものを失ってしまいます。しかし、それは本当に失ってしまうのではなく、彼らは四方囲まれた部屋の外には人生がまだあることもとてもよく知っているのです。」



今でも彼女は真っ暗やみの中で住んでいる。ただ、テレビだけがいつまでも点いているだけである。真梨恵は自室のカーテンを破り、そこに厚い毛布を掛けた。
「この前に、彼女の白くなったおさげ髪を見たけど、彼女はすぐに部屋に隠れてしまったよ。」「青白い肌に窪んだ目、痩せこけた頬、まるで骸骨のようだったよ。」と、弟はため息混じりに語る。…



2013年1月3日、執筆
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