初めての飛行(1)



「もう燃料も残り少ないわ…帰れるかしら」

彼女はフライトプランの指示する地点へ来た、そこは高度100kmを超え「宇宙」の領域であった

  「ここから先の指示を下さい」
フライトプランにはなぜかその先の地点や、帰還する基地も書かれていなかった。

 「作戦を言い渡す、自機を爆破せよ」

それを聞いた彼女はあのフライトプランの意味を理解した…
 しかしそれをもらった時の彼女はその意味を知るはずもなかった
なぜならこれが初めての出撃なのだから…
どうして自分が選ばれたのか、どうして自爆しなければいけないのか、そしてどうして死ななければならないのか!
しかし聞くだけ無駄だろう今の自分にはそれを聞いても意味の無い物なのだから…


  「了解!」

彼女はそう言うと自爆スイッチに手を掛けた

  「木っ端微塵かぁ…いいじゃない!何も残さず私の全てを消し去っておくれ」

そう思うと彼女は力強く自爆スイッチを握り締めた…

「あれ?この感覚以前どこかで…」

なにか懐かしい感覚を思い出した瞬間、彼女の体を光が包み始めた…


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初めての飛行(2)



※彼女が飛び立つ前の話です

 「どうします?長官!」

「やむ終えん…所長、あの機体を処分が必要だ、直ぐにできるか?」

軍事協定にて戦闘機の開発が認められていないこの国で密かに進めていた国産機の開発が、その協定国に漏れたらしい…
その機はかなりの完成度で協定国の戦闘機を凌駕するものであった
しかし開発が認められていない以上機の存在を認めるわけには行かない
認めてしまうと協定国にその技術を渡さなければならないからだ
そして研究所への査察は5日後と決まった…

 「5日後までに姿形を消さなきゃならないのですね…普通に地上で処分しようにも痕跡まで消す事は…」

「どこかに落すとか…そうだ、高高度の上空で爆破だとどうだ?」

 「それが良いかもしれません高高度で全速力で飛行させて爆破すれば落ちてくる破片もほとんど燃え尽きます」

「じゃあそれでいこう!」

 「しかし問題が…そこまで飛ばす為の無人操縦の改造に一週間はかかります…」

「そうか…所長…」

 「長官…とにかくこの作戦は私に任してください!なんとか作は考えます」

「わかった!所長!頼んだぞ!」


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初めての飛行(3)



※なぜ、彼女が選ばれたのでしょうか

 「長官には5日後迄に処分するって言ったけど…どうだ改造の方は?」

  「無理です!部品が揃いません!」

 「そうか…じゃあ誰かに乗ってもらって…」

  「所長!誰も乗りませんよ!」

 「冗談だよ!ここに居る者の名簿は出しているから当日誰が欠けても駄目って言ってたし、
 それに『これで飛んでくれ』とフライトプラン渡せばすぐに片道だとバレて誰も飛ばないよ!」

  「そうです!ここに居るものは皆あの機体を上空で爆破させる事を知っているので無理ですよ!」

 「待てよ…今日から実習生が入ってくるんだよな?そいつのデータ見せてくれ」

そこには『操縦シミュレーター講習終了』の文字…

 「こいつの所属はどうなってる?」

  「昨日訓練所の所属を離れています、今日この研究所に配属予定で、まだ登録手続き前ですが…」

 「よし、こいつの登録を中止しろ!」


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初めての飛行(4)



※査察の日の事です

「ふう、あの機体については『実物を作った事実は無かった』と認めさせる事が出来たよ…所長!よくやった!」

 「長官、良かったですね」

「ところで所長、あの機体はどうやって処分した?」

 「上空で爆破しました」

「見るところ、ここのスタッフも全員いるようだしどんな形で?」

 「操縦装置を使いました」

「そうだったな、それにしても無人操縦装置はとても間に合わないと言っていたんじゃないか?しかも予算もほとんど残っているが…」

 「…どこでも入る安い材料を使って即席の操縦装置を使いました、その詳細は秘密ですがね…」
 

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