水中華




その日は波が恐ろしく静かだった。
空で輝いている月は数時間もすると替わりに出てくる太陽が何を見るのかを暗示するように赤く、赤く輝いている。

(あんなに赤い月なんて、今まで見たこと無いなあ……)



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気味が悪いくらいに色を帯びた月を浅い海の底から岩場に座って仰ぎ見る少女がいた。
海の底で座っていられるのだから当然普通の服を着ているわけでもなければ裸でもない。
少女は透明度の高いガラス製のヘルメットを被り、くすんだ緑色のゴムを薄く延ばし人の形をかたどった服を身にまとっている。
両手と両足には茶色のゴム製手袋と長靴をつけていて海水と皮膚が触れないような格好をしていた。

「……けど」

(これもお国のためだもの、私だってやれることをやらなきゃ)

少女の両手に力が入る。
彼女が握っているのは自分の背丈よりも遥かに長い竹竿。だがその竹竿は物干し竿のような単なる棒ではない。
竹竿の先端には少女の二の腕よりも若干太い灰色の筒が装着され海面を睨んでいた。

(お父様、お母様……お兄様、由依はやります)

ちらりと視線を落とし自分の着用したヘルメットとゴム製服の接続部となっている金属製の部品に貼られている銘板を見る。
その銘板には少女の名前が刻まれていて他人との区別ができるようになっていた。
何故そのようなものが潜水するための装備にあるのか……それは少女……由依の周囲を眺めればすぐに理解できる。
同じヘルメットとゴム製の服、潜水具一式を着用した人間が一定間隔で海底に座っている。
そうした人間は普通ならば存在しないだろう。だがここは普通の場所でも環境でもない。
潜水服の集団は軍隊の兵士であり、集団はとある命令に沿ってこの海岸に近い浅瀬に配置されているのだから。

「はぁ……はぁ……」

ゆったりとした呼吸がヘルメットの中で循環する。聞こえるのは波の音と自身の呼吸だけ。手持ち無沙汰だった由依は瞼を閉じこれまでのことを思い出す。
由依が軍隊に入ったのは恐ろしく単純な動機だった。
国難。
由依の住んでいる『帝国』は彼女が女学校に入る前から世界の半分を敵に回す戦争を始めた。
最初こそ敵国を圧倒していた『帝国』ではあったが年数の経過と共に戦力をすり潰し、由依が女学校に入って2年目になった時点で首都すら爆撃される程に追い詰められていたのだ。
長引いた戦争は人材すら奪ってしまい由依たちが軍需工場に駆り出されるのと同じ頃には同年代の男子も兵士として前線に赴いていた。
少女であるからという理由だけで戦えない。由依は正直悔しい気持ちで心が一杯だった。彼女の兄も兵士を志願して出ていったものだからその気持ちはなおさら強く精神に刻まれる。
そんな由依の元にある日転機が訪れた。少女であっても兵士として欲しがる部隊があるということで入隊志願の勧誘が来たのだ。
由依は二つ返事で両親にも黙ってその部隊に志願した。そして少女は戦乙女に変わる。『伏龍』の名を持つ武器と共に。

「はぁ……はぁ……」

(呼吸には……気をつけて……)

由依の心臓は緊張から早く収縮し普段よりも興奮しているのが自身でも理解できたが呼吸は一定の間隔で揺らがない。
『伏龍』と呼ばれる潜水服と装備は敵に位置を察知されないために特別な空気循環装置を備えている。
だが構造上の問題である一定以上呼気がヘルメットと潜水服内に篭ってしまうと装置が上手く機能せず、最悪の場合命を落としてしまう。
同世代の少女よりも冷静さがあったのか運よく由依はここまで何事も無く済んだが、同じクラスで志願し同じ部隊に配属された友人はこの問題が原因で死んでしまった。

(あんなのは、嫌)

訓練中に死んだ友人の最後はただただ悲惨だった。
隣にいた友人は由依の目前で急に片手を海面に向けて伸ばしたかと思うと身体のバランスを崩し浅瀬の底である岩場に転んでしまう。
ヘルメットと循環装置を繋ぐゴム製のホースをもう一つの手で掴み両足を左右交互にじたばたさせ岩場の間に溜まっている砂を水中に巻き上げていく。
気がついた由依と周りの仲間が近づいていくが陸上と同様に身体は動かせず、また不用意に浮き上がらないよう腰につけられた重りが障害となってなかなか近づけない。
そんな中友人はヘルメットを両手で叩いたり潜水服との接合部に手をかけ外そうとする。ヘルメットを脱いでも溺れるだけであることすら理解できないくらいの苦痛を味わわされているのだ。
やっとの思いで由依が友人のそばまで来た頃には全てが終わっていた。
目前でヘルメットへ爪を立てるように両手を動かしながら足でひたすら海底を蹴っていた少女がふいに身体をぴくりとも揺らさなくなり、顔の色が青白く変化し澄んだ瞳から生気が消える。
それまで友人として振舞っていた少女が一つの誤りで単なる人の形をした物体に変わってしまう様子は由依に死の感覚を実感させるのに充分だった。
死ぬことは軍隊に入った時点で覚悟はしていたとはいえ、敵に損害も与えられずに命を落としてしまうのは耐えられるものではない。由依からすればそれは無駄死にでしかないのだから。

(敵は夜が明けたら来るって言ってたけど、本当かしら)

夜が明けたのか次第に空が白み始める。
上官からの話だと夜に由依たちが海岸線沿いに展開して待機しておけば敵の上陸用舟艇がやって来る。その際に確実に目的を達成せよとのことだった。

(絶対に、絶対に刺し違えてみせる)

由依たち『伏龍』部隊に命じられたのは敵の将兵を乗せた上陸用舟艇の撃沈である。
だが年端もいかない少女たちに与えられたのは潜水服とヘルメットの他には一つしかない。それが由依が夜の明ける前から握り締めている妙な筒のついている竹竿だ。
妙な灰色の筒の正体は爆薬であった。海の向こうからやって来る敵の上陸用舟艇を爆薬つきの竹竿で突いて爆発沈没させるという計画である。
この武器、由依たち部隊の隊員には各自一本ずつしか渡されなかった。要は自分の命と引き換えに一隻沈めろという話らしい。
いわゆる特攻兵器だとは聞かされていたものの、いざ実際に武器を渡されて実行を命じられてしまうと由依は心の中に冷たい笑いが生まれてしまった。
理知的だったと思っていた軍隊がとうの昔にそれをかなぐり捨てていたという事実に。
そんな集団だとわかってもなおそれにすがって両親を守らなければならないという現実に。
友人が死んだ時は一晩泣いた由依だったが、ここまで自身の存在が薄く軽いと思い知らされるとどこか『おかしく』もなってしまう。
ただ、それでも彼女は潜水服を脱がなかった。国への、親への献身という意識は曲げられなかったのだ。

由依に瞑想の時間と場所を与えていた海は次第に明るくなっていく。太陽が水平線から顔を覗かせ光を射し込ませてきたからである。
平和な世界なら生を実感する瞬間だろう。しかし由依からすれば太陽の光はこの世界との別れを意味するものであった。

(見つからないようにしないと)

爆薬のついている竿を一旦岩場に置く。浮力が働いているとはいえさすがに少女に重量物を持たせるのは厳しいと考えたのだろう、待機時には竿の先に装着された二股の脚を開き海の底に置けるようにしてある。
由依は呼吸の感覚を乱さずに手を動かし始めた。たとえ小さな気泡でも場所を特定される材料になると考えたのだ。
ヘルメットと潜水服の間に残っていた気泡を海面に逃がそうと隙間に指を入れそっとなぞる。小さな空気の粒が手袋にまとわりつきながら一つ、二つと立ち上っていく。
続けてゆっくり腰を上げると岩場と尻の間に溜まっていた気泡が浮かんでいく。地面から立ち上がった時に尻を叩くのと同じ要領で手袋に覆われた手で尻を撫でる。
最後にしゃがみゴム靴と潜水服の間に挟まった気泡を指で追い出す。海面で弾ける気泡の音が聞こえそうで由依はどこか楽しさを覚えていた。

「ふう……」

あらかた気泡を身体から追い出すと再び由依はその場にしゃがむ。
鉛製の重りが装着されているために海底ではいくら動いても由依自身が浮かび上がることはない。再び爆薬のついた竿を両手で握りしめ敵が来るであろう方角に睨みを利かせる。
呼吸は意識して乱してはいないが太陽が出てからは明らかに緊張の度合いが増しているのが自身でもわかった。
竿を握っている手にも汗がしみ出しゴム手袋の中に少しずつ蓄積されていく。初めの頃はあまり気にはならなかったが呼吸が繰り返されるのに比例して汗は薄い膜になり拳に力が入るごとに流動する。
ゴム手袋の下は素肌であり、手袋そのものにも特に汗を吸うような処理は施されていないため汗が作り出すぬめりは指先から手の平までに及んでしまう。
汗が分泌されているのは手だけではない。首筋から、わきの下から、暑さを感じるとすぐに反応する箇所からはとめどなく塩分を含んだ液体が流れ出る。
由依が潜水服の下に着用しているのは上下の下着だけであった。その下着も品質が悪いせいだろうか、すぐに汗をたっぷりと吸ってしまい皮膚にぴったりと貼りついたまま離れなくなってしまった。
さすがに由依も不快に感じたようで片手を離し潜水服を引っ張ろうとしたその瞬間……

「……っ?!」

はるか後方から身体を揺さぶる振動が伝わってきた。
敵の艦砲射撃が始まったのだ。
最初は散発的に振動が起こっていたがやがて絶え間なくなり、強さが増してくる。
海中に身を置いているために不気味な地響きを味わわされるだけで済んでいるが敵の砲撃が狙っている後方の陣地にいれば文字通り跡形も無く吹き飛ばされてしまっているはずであった。
もっとも陣地にいようが海の中だろうが行く末は同じなわけで、そこまで考えが至ってしまった由依は自嘲気味に唇を曲げる。

(……来た!)

視界の遠方から小さく海水が泡立っているのが見える。敵の上陸用舟艇だ。
その数は由依が想像していたよりも多かった。何せ訓練の時にやって来る味方の上陸用舟艇は多くても片手で数えられる程度でしかなかったのである。
だが本物の敵は少女に対して全く容赦がない。訓練では航跡が見えていたのに、今近づいてきているのはまるでタライの中で石鹸水を泡立てたかのように水面を引っ掻き回しているのだから。
一瞬この全てを仕留められるだろうかという考えが頭をよぎる。由依は首を左右に振り迷いを断ち切ろうとする。

(私の真上に来たのを倒す、倒すんだ!)

近づいてくる上陸用舟艇は整然と横一列に並んで由依たちの待ち構えている海岸へと突き進む。
幸か不幸か由依の上を通り過ぎそうな上陸用舟艇が一隻、直進しつつあった。
顔に血流が流れ紅潮する。
心臓の鼓動は早くなり胸の中心が熱くなる。
爆薬を装着した竹竿を握る手は固くなり対象を離さない。
狙いを定め後は機会を伺うだけ……だったのだが。

「うっ!!」

右側からもやのようなものが広がったかと思うと身体が左側に強く引きずられてしまう。
どうにか倒れずには済んだが何事かと右側を見る。

「あ……ぁ……」

目前に広がっているのは今までに認識したこともないくらいに鮮烈な赤。
煙にも似た赤は相応に距離を離していたはずの由依の目にもはっきりと確認でき、それが海中を漂いながら拡散していく。
鮮烈な赤を海中に描いていたのは潜水服に身を包んだ少女だった。
少女の身体には不規則に引き裂かれた金属片とおぼしき物体が複数突き刺さりそこから赤い色が漏れ出ている。
強化ガラスで作られたヘルメットにも無数のヒビが入っていたが着用者は慌てもせず海中に浮いたままだ。
巻き上がる砂と赤い煙幕ではっきりとは見えないものの少女の表情には快活さも闘志も、悲壮さすら感じ取れなかった。
片手に握られた竹竿は折れており先端の爆薬はどこかへと落ちたか流れてしまったらしい。
身体から鮮烈な赤をばら撒いた少女の身体は腕や足の関節を不自然に曲げたまま海の底にへばりつく。
……並列で立っていたうちの数人横にいた同級生が着弾し炸裂した砲弾か爆弾の殺傷範囲に巻き込まれてしまっていたのだった。

同級生の惨状を目の当たりにした少女たちはお互いに意思疎通ができなかったのもあったのか錯乱し始める。
炸裂に巻き込まれた同級生の隣にいた少女はうつ伏せに倒れたままもがく。混乱し呼吸の仕方を間違えてしまったのだろう。
またある少女は勝手に持ち場を離れ前進したかと思うと竹竿で海の底を突いて自爆する。
由依の左隣にいた少女は竹竿を捨ててヘルメットを両手で覆う。泣いているのか。表情はわからなかったが彼女もまたそのうち窒息する運命にあったのはいうまでもない。

「はっ……はっ……はっ……」

(わ、私は……違う、違う……っ)

もはや周囲を確かめるだけの余裕は残されていなかった。見てしまえば何も出来ないのは明白である。
平常心を保つのは不可能ではあったがある種の興奮状態でいたのは変わらない。由依はただ一点を見つめた。
尾部にあるスクリューが無機質に回り進んでくる敵の上陸用舟艇。
自信ありげに水をかき分けながら近づいてくる。
その『腹』は由依に攻撃して下さいと言わんばかりに無防備で、傲慢だった。

(来なさい、来なさい、来なさいよっ!!)

由依が体重を前にかけ、両腕を突き出したのは自分の真上から太陽の光が遮られた時であった。
恐ろしく一挙手一投足がゆっくりとしていたのは単に水中で抵抗があったからではない。
決定的な瞬間には人間の感覚というのは限界にまで鋭敏になってしまう……そういうことなのだろう。
由依の突き出した竹竿は的確に目標の中心を捉え、爆薬の先端に備わっていた信管が作動する。

(……やった)

願いを成就させた少女の目の前で爆薬はかすかにきらめき、そして海上を進んでいた物体の金属板に穴を穿ち強引に広げ捻じ曲げる。
同時に海水も接していた空気を抱き込みながら何度もかき回され無数の気泡を作り出す。
最後に複雑な曲線で構成された衝撃が波となり周囲に発散されていった。
万華鏡と同じ嘘のような現実を、由依はまばたきをするごく限られた時間で体験する。
けれどもその光景は次にまぶたが開いた時にはすっかり消えてしまっていた。

「ぐっ!!」

爆薬の炸裂で発生した衝撃波は上陸用舟艇と由依を容赦なく吹き飛ばす。
由依の身体は何人もの人間にのしかかられるよりもさらに強烈な衝撃で海底に押さえつけられてしまう。
底が砂と岩で構成されていたのが運の尽きで背負っていた空気循環装置はあっさり潰れた。
また鈍い音と同時にガラス製のヘルメットにもヒビが入ってしまったらしく髪が湿り気を帯び始めた。

「あっ……う……ぁ」

身体が熱い。
単に火照っているのならば興奮状態にあったのだから当然なのだが何かが外に吸い出されている感覚を覚え由依はふと倒れた自分の身体を確かめる。
血液。
赤く、ただひたすらに鮮やかに赤い血液。
それまで自分の中にあったはずの血液が視界全体を覆う。
すぐには状況を把握できなかった由依だが十秒も経たないうちに置かれた環境を理解させられてしまう。
胸と右肩には金属の小片が刺さっておりゴム製の潜水服と皮膚を引き裂き、血液が海水へと強制的に吐き出されている。
代わりに冷たい海水がどっと潜水服の内側に侵入し長靴を履いていた足先から手袋をしていた指先までを駆け巡り身体を舐め回していた。

「いや……ぁ、あぁ、あああぁあああ!!」

海水が入ってくるのに応じて体温が急激に落ちる。
本能に任せるまま由依はヘルメットの中できつく反響するくらいに声を上げ両手でヘルメットと潜水服の接続部を掴み、揺らす。
そこには目的を達成するまでは冷静さをどうにか保っていた気高い戦乙女の姿はなかった。

「ひっ……っぐ、あ、か…は……ああ゛っ!!」

冷静さをかなぐり捨てた少女に潜水服は余りにも冷酷であった。
海水から身体を守っていたはずのゴム製の服は今では冷気を帯びた水で一方的に身体を凍えさせ、呼吸を手助けしていた装置はヘルメットの中から適切な量存在していた酸素を奪う。
由依は両目を一杯に開き口を何度も開閉させどうにか酸素を取り込もうとするがもはやヘルメットと潜水服は彼女の努力を認めようとはしない。
爪が折れそうなくらいに力を込めヘルメットを引っかく両腕。
海底を蹴り上げ空しく砂塵を海水に巻き上げる両足。
由依の表情が歪み身体がねじれる間にも金属片は食い込み続け少女の体液を放出していった。

「う゛……ぁ……ぁ……」

(やっぱりこんなの……こんなの嫌、嫌だ……)

少女の身体から次第に力が抜けていく。視界には再び太陽の光が飛び込み真っ白な世界を作り出していた。
ヒビの入ったヘルメットには由依が吐いた呼気が水蒸気となって幾重にも塗りたくられている。その呼気も既に紙切れすら揺らせない程度にまで弱まっていた。
足が海底の岩を捉えられず滑ると両手もヘルメットからずり落ちてしまう。意識と同調して身体も反応を止め始めていたのである。

(もう、動けない……どうしよう……)

ぼんやりとした意識の中で思い出されるのは平和な頃の楽しい思い出。
遊園地、海水浴、お正月。
兄が出征する前の日に食べた夕食の味。
実家にあった自分の部屋の匂い。
友人たちとの他愛も無い会話。
午後の日の射す教室。
全てが夢か幻のようで……けれども懐かしく暖かい。

(そうか……私もああいう風に)

そして訓練途中で世を去った友人の顔。
自分では確かめる術も無いが、あの悲しげな……恐ろしく精巧な人形にも似た瞳と表情。
たどっている道が同じなら同じ姿、同じ顔をしているはずである。

(何だったんだろう……な……私……って)

ふわり、と由依の身体が浮く。少なくとも彼女はそう感じた。
苦しかったはずの息もだんだんと楽になって……そして……



「そうだ、ゆっくり接近してくれ……自爆されたらかなわん」

夕闇迫る海に一両の水陸両用車が泳いでいる。上陸用舟艇に比べればアメンボ並みに静かであった。
水陸両用車には数人の男が乗っていた。薄い黄土色に近い制服を着た軍人である。

「よぉし止めろ、いいぞ」

助手席に座っていた軍人がドアに片足を引っ掛け身を乗り出す。
視線の先にあるのは……『由依だった』物体である。

「妙な服を着ているな……潜水服、か?」

怪訝そうな表情で『由依』の状態を確かめる軍人。
そこに突然閃光が走った。



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「ひでぇモンですよ、これ女の子ですぜ」

閃光の元はカメラのフラッシュだった。マグネシウムが焚かれたのである。
カメラの持ち主である従軍記者と思しき人間が少しばかり下品に笑いながら話す。

「……連中も人間、か」

軍人は漂う『由依』の足を掴み水陸両用車に引き寄せる。
しばらく口からは言葉が出なかったが一つため息をつくと従軍記者に語りかけていく。

「君のところには女の子がいただろう、確か」

「ええ、十五歳ですよ……この子と同じくらいですかねえ」

そう答えながら従軍記者は二度、三度とフラッシュを焚きながら写真を撮っていた。

「どうするんです、これ?」

撮影の手を止め今度は従軍記者が質問する。

「敵の新兵器だからな、装備品は回収して後方で分析する」

「『中身』はどうするんですかい?」

「弔っておく」

「まさか、情が移ったってのはないでしょうね?」

「感傷的にもなろうものさ……そうだろう?」

軍人が見つめていた『由依』から顔を上げると、その先には少女が守ろうとしていた街が紅蓮の炎に染められているのだった……



1月下旬、H_AさんからとあるSSを頂きました
突然の俺得過ぎる内容に、こりゃ私からも何かしら応えねばと思いまして、
今回、ようやく伏龍娘第二弾と言う事で形にする事が出来ました
また前回に続き、渦潮さんには背景・効果で挿絵に協力して頂きました
渦潮さん、H_Aさん本当に有難う御座います!m(__)m

…と言う訳で、
ちなみに挿絵2枚目、一見第一弾の使い回しに見えますが、
あえてそれっぽくしたには理由が……前回のSS読んで貰えた人なら分かるかもw

後書き kit 様



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