あえかな光



今回の下書きのとき書いて自分でも忘れてた超短いSSが出てきましたとさ(;´Д`)

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ごぼっ。ごぼぼっ。
空気を全部吐いてしまったら、吸い込むものはもう、水しかなかった。

(苦し… 胸が痛い痛い痛いよぉ…)
空気よりもずっと重く、粘りのある海水が気管支を駆け下り、肺を満たしてゆく。
身体が水を拒絶して、思い切り背が反り返り吐き出そうとして。

びくん、びくん。
何度も跳ね上がる。

けれど、その度に新しい水が肺を蹂躙する。
吐き出しても、吐き出しても、入ってくるのは水ばかり。

……ごぼぼっ。

金魚鉢めいた透明なヘルメット、その裂け目から最期の息が逃げ出したあと。

指先からゆっくりと力が抜けて。
伸ばした先に海面の光が、遠く、もう届かないほどに遠く。
おだやかに煌めいている。

見開いた瞳に映るあえかな光も。
彼女の身体が深い海に抱かれるように沈むにつれて。
やがて静かに。
瞬きを消した。

(了)

*2014年4月(書きおろし)



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