蒼海に眠れ






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殺戮は一方的で、しかも、おそろしく手際が良かった。リブリーザ(循環式呼吸装置)につながる2本のホースを切断したばかりか、海上でヘルメットに外気を取り入れるバルブをオープンにする。前者だけであればヘルメット内部の空気は濁り、高まったC02分圧が装着者を眠るような死に誘ったかも知れない。だが、普段なら水圧によって閉じられているはずの外気供給用バルブをどうやってか全開にされた結果、彼女たちのバブルヘルメットには海水が流入する結果となった。

 水の満ちたヘルメットの中、海藻のようにゆらめく髪。苦しげに開いた指は虚しく水を掴んで、何処にもよりどころのない身体は海中を漂うばかり。
 限られた空気を呼吸して緩慢な死を迎えるのと、溺水の苦しみを味わうのと、果たしてどちらが慈悲深かったのだろうか? ともあれ、殺戮者は慈悲など考慮せず、敵方の水中部隊に速やかな死を与えることを良しとした。

 防衛戦は突破され、〈敵〉の侵入を許してしまった海底基地にレスキューの手をさしのべる余裕などありはしなかった。
 金魚鉢めいて透明なヘルメットが満水になるのをかろうじて阻止した隊員の中には、スピアガンで手足を撃たれたとしても失血が命を奪うまで数刻の余地があったかも知れない。だが、ハッキングされた電脳と基地の機能が回復した頃には、水中部隊に生き残った者は皆無であったという。

*2014年5月(書きおろし)



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