深き誘い







水底に棲む「それ」は、頭上はるかに輝く薄膜を騒がせて、行き交う存在に興味を覚えた。とりわけ好ましい波を水に伝えてくるひとつを、傷つけないように慎重に掴み、彼の住処まで引きずり込む。
黒く艶のある表皮に「腕」を滑らせると水の中に大きく声を響かせて身をくねらせた。その声をもっと聞きたくて無数の腕をうごめかせ、柔らかな黒い表皮越しに愛撫する。衝動のままに「それ」は1本の腕を身体の中心に突き立てた。

ごく薄い漆黒のラバーを隔てて突き上げる「腕」は、彼女に未知の快感を与えた。最後に残った息は快感の叫びとなって水底に吐き出された――

動かなくなった彼女に、「それ」は困惑したように、思案するかのように腕を這わせる。どうやらこの場所では長いこと動いていられないらしいと理解し、力なく開いた唇に「腕」をそっと差し入れる。
身体を作り替えてこの場所に適した構造に変えたら、またあの声を聞くことができるだろうか。「腕」は優しく彼女の内側を撫でて、ちょっとした大仕事に取りかかった。

(了)

※書き下ろし(2014年9月)








乾 様GALLERYに戻る






陽炎
掲示板カテゴリ検索
[アダルト]総合 写メ/ムービー
雑談/その他 体験談/小説
無料レンタルBBSebbs.jp