漂流… に




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デブリの直撃によって船外作業中だった彼女は虚空へと放り出された。 命綱も引きちぎられ彼女の帰るべき宇宙ステーションが無事かすらもわからなかった。

「ハァッ…ハァッ…ステーション聞こえますか? こちらミッションスペシャリスト ミヅキ
現在地不明 漂流している 至急救助を…」

もう何度目になるかわからない救援要請もインカムからはホワイトノイズだけが流れてくる。
徐々に供給されるエアも渋くなってくる。
もはや、ステーションの無事すらも怪しい。
この宙域で生きているのは自分が最後なのでは…? という嫌な考えが頭をよぎる。
汗が玉のようにふわふわとヘルメット内をうかぶ。 喘ぐような自分の呼吸と心臓の音だけが彼女に現実を教えてくる。
現在地も不明 地上は愚かステーションとの交信も絶たれた彼女に残されているのは彼女の身を守る重厚な宇宙服だけだった。この装備がなければ過酷な宇宙空間で生存することなどできない。
その宇宙服もエアの供給が無くなれば彼女を包むただの棺桶となる。
エア切れの苦悶に歪む彼女の死体を乗せて永遠に宇宙をさまよう棺桶となるのだ。
そういった自身の考えがまた彼女を絶望させる。

「あっ…」
ブルッ と身悶えすると股間に生暖かい感触を感じる。 発狂寸前で与えられたその感覚が彼女を正気へとなんとか戻す。
何度目の失禁だろう…彼女の股間に備え付けられた採尿装置も限界だろう。

ヘルメットのバイザーディスプレイにうかぶ
AIR EMPTY の文字
「嫌ぁ…カハッ…はぅ…」
警告音が息苦しさを更に加速させる。
無機質な赤いライトが彼女の汗ばんだ顔を宇宙の闇の中で照らす。

あと数分の内に彼女の生存に必要な機能がこの宇宙服から失われる… 彼女に残された時間はあと僅か… それまでに救助はくるのであろうか…






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